民法の改正による電子領収書の提供請求権

書面主義を卒業

 昨年9月1日施行の民法改正があり、商品等の買い手は売り手に対し、書面での領収書に代えて電子領収書の交付を請求できることになりました。書面主義だった民法が変わったのです。

 条文としては、弁済者に電子領収書の交付請求権があり、弁済受領者には、不相当な負担でない限り、それに応ずる義務があると、しています。弁済者には、領収書の提供方式が書面と電子のいずれに依るのかの選択権が与えられたわけです。

保存・閲覧の可能状態

 電子領収書の発行とは、弁済者が電子領収書を保存、あるいは閲覧し得る状態にすることです。閲覧する電子領収書は、撮影等による画像保存が可能でなければなりません。アプリ上で画面表示された領収書の内容を撮影画像として保存されたものも、弁済がなされたことの証拠として一定の価値を有する、と案内されています。

これを保存しておくのね。

「不相当な負担」の意味

 また、「不相当な負担」の意味は、次のような場合のことです。 

①請求時点において弁済受領者側に電子領収書提供情報システム等が整備されていない

②請求時点においてシステム障害等による電子領収書発行困難事情がある

③弁済者の要求が弁済受領者側の対応困難な方式での電子領収書である

 なお、電子領収書の発行システム等の体制整備がされているにもかかわらず、前例がないことを理由にしたり、たまたま対応した従業員に操作能力がなかった、というような場合については、「不相当な負担」には当たりません。

インボイスとの兼ね合い

 また、令和5年10月より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されますが、「民法上の受取証書」と「区分記載適格請求書(インボイス)」では、必要とされる記載事項が異なります。ただし、「民法上の受取証書」と、それ以前に発行されている請求書や納品書を含めて、インボイスが必要としている事項、①請求書発行者の氏名又は名称、②取引年月日、③取引内容、④税率ごとに区分して合計した税込対価の額、⑤請求書受領者の氏名又は名称、が記載されていれば、これを保存することにより消費税の仕入税額控除の適用を受けることができます。

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暗号資産へ税務の変遷

貨幣性の認知、非課税資産化

 仮想通貨は、平成29年4月1日施行の改正資金決済法で、法令上の非認知の存在から、支払手段としてその性質が新たに認知されることになりました。これを承けて、平成29年度税制改正における政令改正で、消費税課税対象資産であった仮想通貨は、平成29年7月1日から非課税資産とされることになりました。ただし、土地のような非課税資産ではなく、また、有価証券のような5%非課税資産でもなく、貨幣と同じ課税対象外的な非課税資産です。したがって、課税売上割合の計算に影響しない譲渡性資産となりました。

暗号資産への名称変更

 さらに、仮想通貨ではなく暗号資産と呼ぶのが国際的風潮であることに合わせるために、令和元年に資金決済法の改正がなされ、法令上の名称が「仮想通貨」から「暗号資産」に変更されることになりました。これを承けて、税法令での「暗号資産」への名称変更の改正も一斉に行われ、令和2年5月1日から施行されています。

暗号資産は棚卸資産

 暗号資産の譲渡による所得は、暗号資産が棚卸資産として定義されていることから、雑所得・事業所得に区分されます。保有する暗号資産を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。譲渡原価は、原則として、総平均法により計算した金額となります。その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります。

収入計上基準

 保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合には、それぞれの受取資産の時価を対価として暗号資産の譲渡がなされたことになります。暗号資産に含み益がある場合、法人では課税の対象になります。

棚卸資産なので

 暗号資産は棚卸資産なので、個人が贈与や遺贈により暗号資産を他の個人又は法人に移転させた場合、その贈与や遺贈の時における暗号資産の価額(時価)が暗号資産譲渡対価となります。また、個人が、時価よりも著しく低い価額の対価による譲渡により暗号資産を他の個人又は法人に移転させた場合には、時価のおおむね70%に相当する金額が暗号資産の譲渡金額となります。

年間取引報告書を入力して棚卸帳が出来るようなシステムを国税庁が用意しています。

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