事業全体を担保に融資を引き出す新制度

制度誕生の背景と意義

令和6年に成立した「事業性融資の推進等に関する法律」に基づき、令和8年5月から「企業価値担保権」制度が本格施行されます。これまでの融資では不動産や売掛債権など個別資産を担保に差し出すことが一般的でした。しかし資産が乏しい成長途上の中小企業には、優良な事業を持ちながら融資を受けにくいという構造的な問題がありました。この新制度は将来のキャッシュフローを含む「事業全体の価値」を一体として担保にする全く新しい仕組みです。不動産担保がなくても事業の実力で融資を引き出す道が制度として整いました。

経営者が安心して使える理由

この制度を使うと「銀行に経営へ口出しされるのでは」と不安に思う経営者もいるかもしれません。しかし金融庁のガイドラインは明確に釘を刺しています。企業価値担保権を設定しても、労働契約や労働条件への追加的な制約は一切生じません。金融機関が人員整理や賃下げを要求することは銀行法令上も禁じられており、経営者の自主性は法律によって守られています。担保に入れるのは事業の価値であり、経営の主導権ではないのです。

金融機関との新しい関係

この制度が促すのは、事業者と金融機関との「伴走支援型」の関係です。貸し手は資金を供給するだけでなく、事業者と緊密に連携して経営課題の解決や成長を支援することが求められます。経営者にとっては、これまで以上に「事業の中身」を評価してもらえる環境が整うことを意味します。自社の強みや収益構造を整理し、将来性を金融機関に伝えられる状態にしておくことが、制度活用の土台となります。

今すぐ取り組むべき準備

企業価値担保権を活用した融資は現在、主要金融機関を中心に準備が進んでいます。中小企業経営者が今すぐ取り組むべきことは3点です。1点目は取引金融機関に本制度への対応状況を確認すること。2点目は自社の事業計画・収益計画の精度を高めること。3点目は顧問の中小企業診断士や税理士と連携し、事業価値の「見える化」に着手することです。不動産担保に頼らない融資の扉は、事業の実力を磨く経営者にこそ開かれています。

企業支援の一環として、事業の実力を融資に変える制度ができました!

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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)

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少額減価償却資産の取得価額拡充で上限40万円未満へ!

制度の目的と背景

中小企業者が事業に必要な少額の設備や備品を購入した際、その費用を購入年度に一括して経費計上できる「少額減価償却資産の特例」が令和8年度税制改正で拡充・延長され、令和8年4月1日以後の取得分から適用されます。本来、減価償却資産は耐用年数に応じて毎年少しずつ費用計上するのが原則です。しかし、それでは資産管理の事務処理が煩雑になります。本特例は中小企業の事務負担を軽減し、積極的な設備投資を後押しするために設けられたものです。約66万社が活用しており、令和5年度の適用総額は3,728億円に上ります。

今回の改正ポイント

改正前は取得価額「30万円未満」の資産が対象でしたが、今回の改正で「40万円未満」へと上限額が引き上げられました。これにより、これまで対象外だった30万円から40万円未満の設備・ソフトウェア等も一括損金算入が可能となります。適用上限は年間合計300万円で、この点は改正前と変わりません。適用期限は令和10年度末(令和11年3月31日)まで3年間延長されます。なお、貸付けの用に供した資産(主要な事業として行われるものを除く)は引き続き対象外となりますのでご注意ください。

対象企業と要件の確認

この特例を利用できるのは青色申告書を提出する「中小企業者等」に該当する法人です(個人も青色中小事業者であれば利用可)。資本金額または出資金額が1億円以下の法人が基本となりますが、大法人の子会社等や通算法人、保険業法に規定する相互会社、投資法人、特定目的会社、適用除外事業者(過去3年間の平均所得金額が15億円を超える事業者)は対象外です。従業員数は中小企業者で400名以下、出資金等が1億円超の組合等では300名以下が要件となります。自社が確実に対象に該当するかは、税理士に確認のうえで購入の検討をお願いします。

経営者がいま行うべき行動

単価30万円以上40万円未満の備品・ソフトウェア・工具等の購入を検討している場合、一括費用計上が可能となりますから、年間合計300万円枠の管理と購入タイミングを確認し、投資計画の見直しに着手してください。税務申告の際には適用漏れのないよう、顧問税理士との早めの打ち合わせをお勧めします。

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