個人事業者の廃業時「みなし譲渡」

廃業する個人事業者の4割が申告漏れ?

 個人事業者の方から「後継者がいないなら自分の代で終わり」という声をよく聞きます。後継者や事業譲渡先が見つからず事業整理(廃業)となっても、大切に続けてきたお店だからこそ、最後はスッキリと幕を閉じたいものですよね。ところが、会計検査院が2015~2017年に廃業した個人事業者の確定申告書などを調べたところ、「4割弱の個人事業者が消費税の課税漏れをしている」と指摘したことがあります。

見落としがちな消費税の「みなし譲渡」

 会計検査院の指摘は、消費税の申告で「みなし譲渡」を考慮していない納税者が多い点にあります。消費税は、原則として事業者が対価を得て資産を譲渡する場合に課税されます。ただ、実際に代金を受け取っていなくても「時価で譲渡した」とみなして課税する制度があります(みなし譲渡)。具体的には次の2つのケースが該当します。

⑴ 個人事業主による「自家消費」

事業用の棚卸資産や備品を事業主本人や家族が私生活で使用するケース

⑵ 法人から役員への「贈与・低額譲渡」

会社が所有資産を役員に無償贈与したり、時価より著しく低い価格で譲渡するケース

個人事業者の廃業時の取扱い

 廃業時に在庫やパソコン、車両などの備品が残る場合、事業主本人が引き継ぐ(家事用にする)ことになります。これも⑴の「自家消費」とみなされ、廃業時点で消費税の課税対象になります。

そのため、廃業時の最終消費税申告では、売上に加え残存資産の時価を課税売上高に加算して計算する必要があります。

<具体例> 売上1,000万円の他に

廃業時に次の資産が残っている場合

在庫 (棚卸資産)通常の販売価額200万円(仕入150万円)
車両時価50万円

在庫は「通常の販売価額×50%」と「仕入価額」の高い方の金額を課税標準とします。 この例では、売上1,000万円+みなし譲渡200万円(在庫150万円+車両50万円)の1,200万円が消費税の課税標準となります。

「みなし譲渡」を回避するには

 この影響を減らすには①廃業前に資産を廃棄処分する、②免税事業者になってから廃業する等が考えられます。業種によっては簡易課税制度も活用できるでしょう。

お疲れさまでした。最後まで油断せずに、申告しましょう!

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名義預金の相続課税

見落としやすい名義預金

 遺産分割で見落としやすいのが名義預金です。親族名義で預金口座がつくられるので被相続人が生前、自分にプレゼントしてくれたものと思い込み、相続財産となる場合があることに気づかない。しかし、その場合でも相続財産として申告の要否を検討しなければなりません。

帰属者の判定要素

 税務署が相続財産に該当するかチェックするポイントは、次のものとなります。

  • 預金の原資は、誰が出捐したか
  • 預金口座は誰が開設し預入れしたか
  • 預入者の意思はどのようなものであったか
  • 通帳と印鑑を保管し、預金の預入れ、払出しをしたのは誰か

 被相続人が預金の原資を出捐し、親族名義の口座を開設し、通帳と印鑑を被相続人で保管し、預金の出し入れをしていれば、被相続人の名義財産とされる可能性が高まります。

 反対に、被相続人が親族に贈与の意思を示し、親族も受け取る意思を表示していたことが書面等で明確に確認できる場合は、贈与税の課税対象となります。

 国税庁の「誤りやすい事例 ⑥申告書第11 表の付表3関係」では、被相続人以外の名義財産(預貯金)について、名義にかかわらず、被相続人が取得資金を拠出していたことなどにより被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となることが解説されています。

配偶者の名前で預金した場合

 夫婦が婚姻中、給与所得や事業所得等で得た財産は、夫婦の一方が単独で有する財産(特有財産)として夫婦それぞれに帰属します。夫が自身で稼得した財産を妻名義で預金した場合、帰属者の判定要素に照らして名義財産となる可能性があります。

なお、贈与となることが明らかとなり、婚姻期間中に夫婦が拠出した資金を生活で消費するとき、贈与税は非課税となります。

子や孫に財産を残すための意思表示

 被相続人が生前に子、孫の名義で預金口座をつくるのは、相続税を減らす動機もあるでしょうが、自分の意思で財産を渡したい願いもあるのではないでしょうか。親族名義の預金口座が見つかったときは、被相続人の生前の意思を尊重して遺産分割すれば協議が円滑に進むかもしれません。

親族の間で日頃から相続に向けた対話が大切ですね。

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