給与所得控除の令和8年度改正

給与所得は見えにくいもの?

 企業から支払われている給与そのものの額で、何も引かない(通勤費等の非課税のものは除きますが)額が「給与収入」です。年収とも呼ばれています。一方「手取り」と呼ばれるのは給与収入から源泉所得税や住民税、社会保険料や組合費等、給与収入から差し引かれるものをすべて計算した上で、給料として振り込まれる金額です。

「給与所得」は、給与収入から「給与所得控除額」を引いたもので、所得税の計算等に用いるものです。最終的には給与所得から社会保険料控除等、各種控除の金額を引いた上で税額を計算しますが、サラリーマンの実生活では所得税は給与支払いごとに徴収されるので全体像が見えにくく、自分の給与所得額がいくらなのかというのを確認する機会は源泉徴収票や確定申告書を見た時くらいなので「手取り」と「給与所得」を同じものだと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

給与所得控除の計算は「概算」

 給与所得控除は収入を得るために必要な経費を「概算」で差し引く制度です。

給与所得控除額は令和7年・8年と連続の改正が行われていますが、いずれも「給与所得控除の最低保証額」の引き上げに留まっています。

最低保証額だけの改正

 令和8年の給与所得控除額は以下の通りです。

給与収入給与所得控除額
220万円以下74万円 69万円+物価指数上昇分5万円)
220万円超 360万円以下収入金額×30% +8万円
360万円超 660万円以下収入金額×20% +44万円
660万円超 850万円以下収入金額×10% +110万円
850万円超195万円

※赤字部分が令和8年の変更部分

基礎控除が消費者物価指数の上昇率を加味して調整されるようになったのと同様、給与所得控除の最低保証額も物価上昇率を加味するようになりました。範囲を見ると、パート・アルバイトの方の「所得税の壁」を上げるための微調整といった改正です。

「収入を得るために必要な経費を概算で」という建前なら、全階層控除額を引き上げてくれてもいいのに

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退職年金の継続受給権に対する相続課税

退職年金は、みなし相続財産として課税

 退職年金を受給していた被相続人が死亡すると、残存期間の年金が相続人等に支払われます。年金は相続人等が固有の権利として取得したものですが、相続により取得したものとみなして相続税が課税されます。

継続受給権の財産評価

 退職年金の継続受給権は、「契約に基づかない定期金に関する権利」として、みなし相続財産に分類されます。

 相続人等が死亡するまで(相続人等が保証期間中に死亡した場合は保証期間が終了するまで)年金を継続受給する場合、受給権の評価額は、有期定期金、または終身定期金として算出した金額のいずれか多い金額とされます。

遺族年金の相続税は非課税

 ところで厚生年金、国民年金等の遺族年金は、厚生年金保険法、国民年金保険法など個別の法律によって受給者が被相続人に生計を維持されていたことを条件に非課税とする取扱いが定められています。

 一方、相続税の非課税財産の規定には、遺族年金を非課税とする旨の扱いはありません。その代わり、相続税法基本通達には遺族年金について、国民年金保険法、厚生年金保険法など個別法により相続税が課税されないことに留意するよう示されています。みなし相続財産であれば、契約に基づかない定期金に関する権利として課税されるのが原則です。

米国遺族年金は相続税が課税される

 それでは遺族年金に相続税を課税しない取扱いは、外国の遺族年金にも適用されるのでしょうか。米国遺族年金について相続税が課税されるか争われた事例があります。

 国税不服審判所の審判事例では、遺族年金が非課税となる取扱いは、個別法で国民年金、厚生年金等に設けられたものであり、米国の遺族年金をみなし相続財産として課税する取扱いを妥当とする裁決が出されています。

 令和8年2月には、地裁においても米国遺族年金の受給権について相続税の課税処分を妥当とする判決が出されました。

課税の公平は守られているか?

 司法判断は外国の遺族年金への課税は「合理性を欠くということはできない」として平等原則に違反しない旨を判示しました。しかし、遺族にとって国内の年金、海外の年金を問わず、生計維持のための経済的価値は変わらないとみることもできます。

今後、控訴された場合に異なる判断が出るのか気になるところです。

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