厚生年金の標準報酬月額の上限の引き上げ

令和7年年金法改正

「厚生年金保険料の上限額はずっと変わらないのではないの?」と多くの方が思っていたかもしれません。しかし令和7年6月の法改正で標準報酬の上限は令和9年から段階的に引き上げられることが決まっています。2年後だし、あまり報道もされていないしということで気が付かなかったのかもしれません。

 平成16年から段階的に引き上げられてきた厚生年金保険料率は、平成29年9月を最後に引き上げは終了して固定されていました。

年金法改正の背景

 平成29年9月以降、厚生年金の標準報酬の上限(現在は65万円)が設けられていて賃金が上限を超えても保険料はそれ以上増えないことになっていました。しかし他にも決まりがあり、全国被保険者の標準報酬月額の平均の2倍が現行の上限を超える状態が続くと政令で新しい等級を追加することができるようになっています。

 上限が設けられているのは年金給付額に大きな差が出ないようにするため、事業主の負担にも配慮するためとされていますが、高額所得者は上限以上の負担は増えないものの年金も増えません。どちらが良いのでしょうか。それより大きな理由は最近の賃金上昇が続いていて平均報酬の2倍が65万円を超える状態が継続しているためということです。これから標準報酬の上限を積極的に上げていく方針にしたようです。

段階的引き上げと企業への影響

 今回の改正により標準報酬月額の上限が65万円から75万円に引き上げられます。

令和9年9月に68万円、令和10年9月に71万円、令和11年9月に75万円と段階的に上がります。賃金が月75万円以上の方の本人保険料負担は月9,100円(社会保険料控除前)に上昇し、その状態を10年続けた場合は月約5,100円(年金課税前)増額した年金が受け取れます。上限が引き上げられると収入に応じた保険料を徴収し、年金も増えることになります。また、賃金が65万円以下の方の保険料は変わらないのですが年金の給付水準は上がります。

 高額所得者が対象のため影響を受けるのは一部の人ですが、企業側も負担するのでコストアップが見込まれます。

上限改定はまだあまり知られていないようです

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税金よもやま話 「担税力」ってご存じですか?

どうやって税の大小を決めている?

 税金には所得税や住民税といった様々な税目(税の名称)があり、その分類も多様ですが、税を課す主体に着目すると、国税と地方税に分けることができます。そして徴収された税金は国税であれば国の財源、地方税であれば地方団体の財源になります。

 では、徴収される税金の大小はどうやって決めているのでしょうか。基本的に儲けや資産が多いと税金を取られるというイメージが強いですよね。この儲けや資産が多い少ないで税金の大小を決める際に「担税力」という言葉を用いることがあります。

担税力とは何か

 担税力とは「どのくらい税金を負担しても生活や事業が破綻しないか」という、経済的な力や能力を指す概念です。税目ごとに「どこに担税力があるか」の見方が異なります。

所得課税:所得税・法人税・住民税・事業税。収入や所得に担税力があるとみなす

消費課税:消費税・酒税・たばこ税など。消費支出という行為に担税力があるとみなす

資産課税:相続税・贈与税・固定資産税など。相続財産や贈与財産という資産に担税力があるとみなす

特に所得税や相続税などで用いられる「ここからここまでの儲けならこの割合で税金を取る」という仕組みの超過累進課税制度は、この担税力という考え方が元になっています。担税力が高い人、つまり儲けが多い人ほど、税金の割合が高くなるわけです。

公平とはいえ、担税力の下での話

 日本の税制は広く分かち合ってゆくために「公平・中立・簡素」を三原則としています。公平といっても「国民全員が公平に額を負担」というわけではなく、経済力が同等の人に等しい負担を求める「水平的公平」と経済力がある人により大きな負担を求める「垂直的公平」という考え方であり、また近年では「世代間の公平」も重要な位置づけとなっています。公平の意味一つ取っても「担税力」を知っていないと、意味を取り違えてしまう方もいるのではないでしょうか。

「担税力」という言葉は税を知る上で重要なのに、知名度がないものになっている気がします。もうちょっと折に触れ、光を当てても良いのではないでしょうか。

「公平」を守るために所得税の控除はめちゃくちゃ細かくなって、まったく「簡素」ではないよね」

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