役員引当金取崩しでも当期の損金

役員賞与の損金算入要件

法人の役員賞与は原則として損金不算入ですが、事前確定届出をしておけば、損金算入できるようになります。

損金算入の要件としては、株主総会の決議で定めること、職務の執行の開始の日から1月を経過する日までに所轄税務署に届け出ていること、が要求されています。

 職務執行開始前に職務執行の対価としての役員賞与を事前に定めるのです。職務執行期間は、当該株主総会終了時から、次の株主総会終了時までです。

役員賞与引当金の計上の場合

 次期以降に支払いが生ずる役員賞与だが、その給付の原因たる職務執行が当期間に行われていた、という場合に会計処理として、(借)役員賞与/(貸)引当金 とすることがあります。支払い時は、(借)引当金/(貸)現金預金 という会計処理になります。

 この場合の支払時の役員賞与は、過去の職務執行期間における執行対価なので、事前確定届出賞与には該当しません。

 ところが、仙台国税不服審判所が令和5年2月3日、引当金処理をして支給した役員賞与を損金算入事前確定届出賞与として認める旨の裁決を行っています。

会社の処理と当局の否認

 会社の申告書別表処理としては、引当金計上期には「引当金損金不算入」として別表加算、賞与支払期には「前期否認引当金当期認容」として別表減算処理しているものと推測されます。

 会社側は、引当計上は、会計処理の継続性及び保守主義の観点からしているものであり、その額は、次期の事前届出賞与の額確定のための参考値にすぎない、との主張をしており、税務署側は、役員賞与について賞与引当金を計上し、支給時にこれを取り崩す会計処理をしていたのであるから、本件各役員賞与に係る職務執行期間は事前ではなく過去である、と主張しています。

審判所の判断

 裁決は、運用実態において引当金計上通りに支給がなされているわけではなく、引当金額は具体的な支給額の決定の参考情報にすぎず、議事録にいつの職務執行に対する役員賞与として決定したかを明確に示す記載はなく、各役員給与が過去の職務執行の対価であることをうかがわせる記載もないのであるから、事前確定届出賞与の各要件を充足する、としています。

裁決の効力は本件限定との解説もあるがそうだろうか

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相続に伴い生ずるが相続税の埒外の収入

未支給年金は相続財産非該当

未支給年金請求権については、最高裁判決(平成7年11月7日)において、その相続性が否定されています。被相続人に係る未支給年金は、遺族が、自己の固有の権利として請求するものであり、被相続人に係る相続税の課税対象にはなりません。

 なお、遺族が支給を受けた当該未支給年金は、当該遺族の一時所得に該当します。

準確定申告に係る還付加算金は相続対象外

被相続人の準確定申告に係る所得税の還付金は被相続人に帰属するものとして相続財産に該当しますが、還付加算金は相続人が確定申告書の提出によって原始的に取得するものなので、相続財産とはならずに相続人の所得(雑所得)となります。

葬式費用から控除する必要なし

葬式費用は、相続税課税対象財産から減額する項目とされていますが、その葬式費用の補填として支給される葬祭費等の公的補助金があります。

これらの公的補助金は、所属する自治体に、喪主が申請します。2年で時効です。支給金は、申請者の固有財産となり、被相続人の遺産には該当しません。

公的補助金には、国民健康保険の「葬祭費」、社会保険の「埋葬費」「埋葬料」、労災保険の「葬祭料」、生活保護受給者の「葬祭扶助」などがあります。

これらは、支給に係る各根拠法において、それぞれ「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない」と規定されていますのですべての税金に於いて非課税であり、相続税の計算上の葬式費用から減算する項目にもなりません

厚生年金や国民年金などの遺族年金

厚生年金や国民年金、恩給などの被保険者であった人が亡くなったときは、要件充足の遺族の方に対して遺族年金、遺族恩給が支給されます。

厚生年金保険法、国民年金法、恩給法、各種共済組合法などに基づいて遺族の方に支給される遺族年金や遺族恩給あるいは死亡一時金(遺族一時金)および寡婦年金には、所得税も相続税も課税されません。これらの法律で、「租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することはできない」と規定されていますのですべての税金に於いて非課税です。

相続税の申告の対象か否か、微妙なものが多いね。

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