特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

買換え特例と似ているが異なる

 住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して、譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たすものであれば、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から損益通算することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰越控除することができます。これらの特例を、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と言います。

「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と比べてみると、損益通算や繰越控除の内容は同じですが、「特定」の特例は、買換えが要件には入っていません。また「買換え」の特例は売却した居住用財産の譲渡損失全ての損益通算・繰越控除が可能でしたが、「特定」の特例については損失額全てというわけではないのが大きな差異です。

 なお、譲渡した年の前年以前3年以内に「買換え」の特例および「特定」の特例を利用していた場合は適用できません。また、前年および前々年に他のマイホームの売却特例を利用した場合にも適用できません。

どこまで損益通算や繰越控除ができる?

 特定居住用財産の特例の譲渡損失の損益通算限度額は、①売却した居住用財産の損失額か②売買契約日の前日の住宅ローン残高から売却額を引いた残額のいずれか小さい金額となります。

例:購入代金5,000万円、住宅借入金4,000万円、売却代金1,000万円、借入金残高2,000万円の場合

①の損失額は5,000万円-1,000万円=4,000万円、②のローン残高から売却額を引いた額は2,000万円-1,000万円=1,000万円となりますから、この場合適用できる損益通算限度額は1,000万円となります。

住宅ローン控除は併用可能だが

 この特例を利用した場合でも、新たに住宅ローン控除を受けることは可能ですが、新たな住宅ローン控除、ということはマイホームを買換えているわけですから、上記の例示の状態でしたら、4,000万円を損益通算や繰越控除できる「買換え」の特例を利用した方が有利になります。

所有期間5年超等、要件も同様のものが多く混同しがちな特例ですね。

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「労務費転嫁指針」への実務対応

「労務費転嫁指針」とは

 政府は持続的な賃上げを実現するために、種々な取り組みを行っていますが、公正取引委員会の調査等によると、価格転嫁について、原材料価格やエネルギーコストと比べると、労務費の転嫁は進んでいないことが明らかになっています。このような状況を踏まえ、政府(内閣官房及び公正取引委員会)は、労務費の価格転嫁の円滑化を促進するため「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(以下「本指針」)を策定し公表しています。

「本指針」の性格

 本指針では、多くの場合で、発注者の方が受注者よりも取引上の立場が強く、受注者側から労務費の価格転嫁を言い出しにくい状況にあることを明確に認識したうえで、「12の行動指針(発注者側6、受注者側4、双方に2)」を取りまとめ、この行動指針に沿った行動を取ることが重要であるとしています。

「本指針」に従わないときは

 発注者が「本指針」に沿わない行為をすることにより、公正な競争を阻害する恐れがある場合には、公正取引委員会において、独占禁止法及び下請法に基づき、厳正な対処をしていくことが明記されています。本指針では、特に労務費について、独占禁止法における優越的地位の濫用や下請法上の買いたたきの問題として起こり得るものを「留意すべき点」として整理しています。

公正取引委員会の対応

 公正取引委員会は、本指針で、受注者が匿名で、労務費と言う理由で価格転嫁に関する協議に応じない事業者等に関する情報を提供できるフォームを設置し、公正取引委員会が調査に活用していくとしています。既に、公正取引委員会のホームページには、「労務費の転嫁に関する情報提供フォーム」が設置されています。

また、この取り組みが政府の重要政策の1つであることから、公正取引委員会は、今後も、重点調査の実施をするとともに、独占禁止法や下請法に抵触する問題がある場合には、事業者名の公表を伴う命令や警告など、これまで以上に厳正な法執行を行うとしています。各企業においてはこの問題が、政府の重要課題であることを認識するとともに、本指針に沿った対応が求められます。

国の重点政策ですので注意しておきましょう

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