定額減税とふるさと納税の控除上限額

今年の定額減税はふるさと納税に影響なし

 ふるさと納税の自己負担が2,000円で済む控除の上限額は、主に所得に対する住民税の額(所得割額)によって決まります。今年行われた定額減税については、住民税も減税されるため、去年ふるさと納税を行った金額が、定額減税によって控除の上限額を超えてしまっていないか、と悩んだ方がいらっしゃるかもしれませんが、結論から言えば今年の定額減税はふるさと納税に影響ありません。

 本来は「定額減税後の所得割額」を参照してふるさと納税の控除上限金額を決定するところを「令和5年中に行うふるさと納税は、後付けの定額減税を想定することができていないので今年は特別扱いする」ということで、地方税法を改正して「令和5年分のふるさと納税の住民税の軽減計算については、定額減税前の所得割の額で行う」としています。この変更によって、今年の定額減税は去年行ったふるさと納税の控除上限金額に影響を与えないため、ギリギリまで寄附された方でも、問題なく自己負担が2,000円で済むようになっています。

例外的に影響する可能性のあるもの

「令和6年6月からの住民税」については、地方税法で特別扱いをする旨を明記しているため問題はないのですが「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」の住民税の定額減税だけは扱いが変わります。本人の所得が1,000万円超かつ配偶者の合計所得が48万円以下のケースがこの「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」となるのですが、この場合のみ、今までの制度上配偶者控除等申告書に記載する必要がなかったため、令和5年に提出したものに記載がなく、令和6年中の定額減税に間に合わないため「令和7年6月以降の住民税から減税される」という仕組みになっています。

 そして、令和7年6月からの住民税から行われる定額減税には、今回地方税法を改正した「令和6年の定額減税はふるさと納税には無関係」の特別ルールがないため、新たに法改正をしない限りは、今年令和6年に行うふるさと納税の控除上限金額に影響を与えることになります。

ただし影響は少ない

 とはいえ、控除対象配偶者以外の同一生計配偶者のみの定額減税、つまり住民税1万円引きが影響を与える内容のため、ふるさと納税の控除上限金額の変動は数千円程度に収まる方が大半です。

住民税は半年遅れで反映されるので年度がわかりにくいですね

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実務で使える就業規則とは

就業規則の問題点

「就業規則を作ったのに実務で使えない」と感じたことはありませんか。例えば、就業規則に定めた解雇事由や懲戒事由に該当するとして行った解雇処分や懲戒処分について、労働者が不服として労働基準監督署に申告をし、又は、裁判になった場合、会社が不利になったり負けたりということが少なくありません。会社としては、「ただ就業規則の記載に沿った処分をしただけなのに」という感想を抱いてしまいます。

この問題の原因が、就業規則の内容にあることは多いのです。現状の日本の労働法制では、法律の表現には抽象的で画一的なものが多く、具体的な考え方や判断基準はこれまでの膨大な量の裁判例が蓄積されたものから成り立っているからです。つまり、就業規則の内容も、法律の文言に沿った表現での記載だけでは足りず、過去の裁判例を踏まえた具体的な内容にしなければ、実際の労務トラブルに対応できなくなってしまうのです。

主な原因は2つ

 抽象的な法律表現による就業規則と、裁判例を意識した内容の就業規則との違いは、次の2つの視点が意識されているかいないかに大きな違いがあります。この2点の意識が薄い就業規則に沿って、会社の行為が行われた場合には、会社に不利な結果になることがあります。

  • 解雇権濫用法理
  • 合理的限定解釈

この2つをごく簡単に説明すると、法律上は会社の権利として認められる行為であっても、裁判所や労働基準監督署から「それはやり過ぎ」と一定の制限がかかることです。例えば「解雇事由」や「懲戒事由」は、原則として会社が自由に定めることができる権利ですが、実際の運用において、「労働者の起こした問題と比較して、その処分は重すぎる」として無効とされることがあります。これは会社が権利を濫用したとしての、解雇権濫用法理にあたります。また、会社が規定した就業規則の内容が広すぎる、例えば、「兼業・副業を全面的に禁止する」との規定について、裁判所が「業務に支障を来たさない範囲での兼業・副業まで禁止すべきでない」と判断することがありますが、これは、会社が定めた「全面禁止」を修正し、「合理的な範囲で解釈すべき」と合理的限定解釈がされたことによります。

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