税法における中小法人、中小事業者、中小企業者

「中小法人」を検索すると

 法人税法で「中小法人」という言葉を検索すると、欠損金の繰越の条文のところにだけ出てきます。所得の50%が繰越欠損金の損金算入限度との規定のところで、資本金1億円以下の普通法人等(「中小法人等」という)については損金算入制限がないとしています。

 ただし、資本金の額等が5億円以上の大法人による完全支配関係があるものは除かれる、との規定になっています。なお、「中小法人」との言葉はないものの、同じ趣旨の規定は、貸倒引当金と法人税率の規定のところにもあります。租税特別措置法では、「中小法人」という言葉は、貸倒引当金の中小企業者特例のところにだけ出てきます。

「中小事業者」を検索すると

 所得税法、法人税法には、「中小事業者」という言葉は存在しません。租税特別措置法で、「中小事業者」という言葉を検索すると、いくつも出てきます。それらは、「常時使用する従業員の数が千人以下の個人」との概念規定で使われていて、租税特別措置法の所得税に係るところの、中小事業者向けの特例の項目のところに出てきます。

「中小企業者」を検索すると

 一字違いの「中小企業者」という言葉も、所得税法、法人税法にはありません。租税特別措置法の所得税に係るところで、「中小企業者」という言葉を検索すると、いくつも出てきます。「常時使用する従業員の数が千人以下」という内容のものとして使われているところと、中小企業等経営強化法で定める概念を引用する仕方で、業種ごとに常時使用従業員数300人以下、100人以下、50人以下などと使われているところとがあります。

 なお、法人税に係るところでの租税特別措置法の「中小企業者」という概念は、人数規定だけでなく、資本金基準として、資本金1億円以下で、発行済株式等の2分の1以上を同一の大規模法人(資本金の額等が1億円超の法人等)に所有されている法人又は発行済株式等の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人以外の法人、とされています。

 租税特別措置法では、「中小企業者」という言葉をあちこちで使っているのに、その概念は統一されていないので、注意を要します。

似たような言葉ですが、異なる概念なので常にチェックが必要です。

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未分類

貸倒引当金の設定と完全支配関係金銭債権

貸倒引当金設定可能法人と対象債権

 法人税において、貸倒引当金の繰入額を損金算入できる普通法人は資本金が1億円以下と限定されています。さらに、資本金が5億円以上である大法人との間に完全支配関係がある法人及び大通算法人は除かれます。

 法人税では、貸倒引当金の設定対象となる売掛金、受取手形、未収入金、貸付金などの金銭債権を個別評価金銭債権と一括評価金銭債権の2種類に分類し、それぞれの貸倒引当金について繰入限度額の計算を行います。

個別評価金銭債権への貸倒引当金

 まず個別評価金銭債権における貸倒引当金の計算を行います。「個別評価金銭債権」とはいわゆる「不良債権」であり、①会社更生法適用等の長期棚上げ債権、②実質的回収不能の一部取立不能債権、③手形不渡り等の形式要件金銭債権などであり、債務者ごとに貸倒引当金繰入額の計算をします。

一括評価金銭債権への貸倒引当金

 その後、個別評価金銭債権を除いた部分に対して一括評価金銭債権の計算を行います。一括評価金銭債権については、過去に貸倒損失の計上事績のある法人では、貸倒実績率法と法定繰入率法との2種類の計算方法から繰入限度額の大きい方を選択することになります。

 貸倒実績率法とは、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額に、過去3年間の貸倒損失発生額等に基づく法定算式により算定される実績繰入率を乗じて計算する方法です。法定繰入率法は、会社の業種ごとに規定されている法定繰入率を使う計算方法です。法定繰入率法の適用においては、同じ取引先について、債権と債務がある場合、いずれか少ない金額が「実質的に債権とみられない金額」として一括評価金銭債権の合計額から相殺消去されます。

完全支配関係にある法人への金銭債権

 ところで、令和2年度税制改正において連結納税制度が廃止され、令和4年4月1日以降開始事業年度からはグループ通算制度が創設適用されています。グループ通算制度の開始に伴い、単体納税制度の部分にも幾つかの税制改正が行われ、その一つとして、完全支配関係にある法人への金銭債権は、個別評価金銭債権及び一括評価金銭債権には含まれないこととされ、貸倒引当金の設定が税務上認められなくなりました。

タックスアンサーでは改正後の案内をしていない

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