在宅勤務手当と割増賃金

在宅勤務手当の取り扱い

 在宅勤務手当について、源泉所得税や社会保険料の算定に関する取り扱いは、既に明確化されていました。一方で、在宅勤務手当と割増賃金の算定の関係についての取り扱いは、明確化されていませんでした。

しかし、厚生労働省から令和6年4月5日に公表された通達で、その取り扱いが明確化されました。割増賃金に先立って明確化されていた源泉所得税や社会保険料の取り扱いでは、在宅勤務手当のうち、実費弁償的なものは、課税対象や保険料算定の対象としないこととされています。この考え方は、割増賃金の算定においても踏襲され、在宅勤務手当が実費弁償的なものであれば、それは労働の対価ではなく、労働基準法上の賃金に該当しないことから、割増賃金の算定の基礎としないこととなります。

「実費弁償的なもの」の考え方

 支給される在宅勤務手当が、「実費弁償的なもの」に該当するものか、どのように考えるかについて、通達では、「在宅勤務手当が、労働者が実際に負担した費用のうち、業務のために使用した金額を特定し、当該金額を精算するものであることが、外形上明らかである必要がある」としています。

つまりは、「就業規則や個別の労働契約等で、実費弁償分の計算方法が明示されていること」及び、その計算方法が、「勤務時間等の在宅勤務の実態を踏まえた合理的・客観的な計算方法であること」が求められています。ですから、毎月一定額の渡し切りで支給し、かつ、会社に返還を要しないものである場合には、実費弁償的なものにならず、割増賃金算定の基礎に含むものとされます。

不利益変更との関係

 既に実費弁償的な在宅勤務手当を支給して、当該在宅勤務手当を割増賃金算定の基礎に含めていた会社が、本通達が公表されたことを根拠に、当該在宅勤務手当を割増賃金算定の基礎から除くことは可能でしょうか。通達では、本通達を根拠として割増賃金算定の基礎から除外することは、「不利益変更に当たる」としています。

したがって、既に実費弁償的な在宅勤務手当を割増賃金算定の基礎としている会社が、本通達を根拠としてそれを除外したとしても、後日に無効とされる可能性が高いことに注意が必要です。

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クラウドサービス利用の注意点

クラウドサービス利用と個人情報保護法

 ネットビジネスの進歩によって、クラウドサービスを利用する企業が多くなりました。同時に、クラウドサービスを利用する際には、個人情報保護法との関連で注意すべき点もあります。多くの民間事業者は、基本的に個人情報保護法における、個人情報取扱事業者となり、入手した個人データを、第三者に提供する場合には、原則として、本人の同意を必要とするなど、様々な義務が課されています。(個人情報保護法第27条など)

クラウド例外とは

 いわゆる「クラウド例外」とは、一定の要件を満たす場合には、クラウドサービスを利用する企業に対して、個人情報保護法上の義務を課さないとするものです。なお、この「クラウド例外」は、個人情報保護法に規定が設けられているものではなく、個人情報保護委員会の「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」での取り扱いに過ぎませんが、実務では広く利用されています。具体的には、Q&A7-53において、「当該クラウドサービス提供事業者が、当該個人データを取り扱わないこととなっている場合には、当該個人情報取扱事業者は、個人データを第三者に提供したことにはならない」とされています。

簡単に言えば、クラウドサービス提供事業者が個人データを預かっているだけの貸倉庫業のような場合が、これに該当します。ここでの「当該個人データを取り扱わないこととなっている場合」とは、契約の内容に、「当該外部事業者が、サーバに保存された個人データを取り扱わない旨が定められており、適切にアクセス制御を行っている場合等が考えられる」とされています。

クラウドサービス利用者の対応

 これを逆に言えば、「クラウド例外」に該当しない場合には、「クラウドサービスを利用する企業は、個人情報保護法上、原則通りの義務が課される可能性がある」ということになります。従って、既にクラウドサービスを利用している場合、または、新たにクラウドサービスを利用しようとする場合にかかわらず、当該サービスが「クラウド例外」に該当するかどうか、契約内容をきちんと把握することが大切になります。

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