スポットワーカー利用の留意点

スポットワーカーが広まる背景

「スポットワーカー」に法律上の明確な定義はありませんが、「ギグワーカー」や「プラットフォームワーカー」等と同様に、単発でかつ短時間で仕事を行う働き手の総称を指します。「スポットワーカー」について、より噛み砕いた表現をすると、スマートフォン等を利用して、スキマ時間を使ったアルバイトをする人が該当します。

近年、これらの働き手が増加した理由は、働く側から見ると、デジタル技術の進化や就業ニーズの多様化等が挙げられるでしょう。また、企業がこれらを利用する理由には、慢性的な人手不足の中で、特に繁忙期での人手の確保や急な欠員の補充が可能になること等が挙げられます。

スポットワーカー利用時の留意点

「スポットワーカー」に法律上の明確な定義がないということは、企業と働き手との間での契約も、双方の認識が曖昧なまま締結され、後のトラブルにつながりかねません。トラブルになる要因の1つが、企業側に、「業務委託契約」としておけば、労働関係法令上の責任を負うことはない、というある種の誤解があることです。各種労働関係法令上の対象となる「労働者等」に該当するかどうかは、契約の名称や形式にかかわらず、客観的に見て、「企業の指揮監督下での労働であるか」、「対価となる報酬の労務対称性はどうか」等によって総合的に判断されます。

特に注意したいケースとしては、店舗や工場で「急な欠員が出て、直近のシフトが埋まらない」等の理由で、突発的な人員補充のためにスポットワーカーを利用するケースです。そこで働く多くの人が「雇用契約」を締結している現場で、「業務委託契約」でのスポットワーカーを一緒に働かせているような場合には、労働基準監督署などの調査では、その就労実態を見て「労働者性」を判断することになります。従って、労働関係法令上の責任を回避する目的で、安易にスポットワーカーと業務委託契約による契約をしたケースでは、その実態が伴っていなければ、後に、思わぬ経営上のリスクが生じることも考えられます。これらのリスクを回避するためには、自社での仕事の内容に合った契約を締結する必要があります。それぞれの事情に応じた、正しい契約を締結しましょう。

「労働者性の判断」が重要になります

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自然災害と時間外労働

災害と時間外労働の関係

 今年は元旦に能登半島での大地震があり、夏には南海トラフ地震の注意喚起がされました。さらに、ここ数年大雨での局地的な水害も多く発生しています。災害は予告なく起きるものですが、一方で、企業は、災害が発生した場合には社会インフラを止めてはならず、可能な限り早急な復旧が求められます。これらの対応のため、従業員に法定労働時間や法定休日を超える労働(時間外労働)をさせる必要が出てくることもあります。時間外労働といえば、労働基準法36条による「36協定」の締結によるものが一般的ですが、同33条では、「災害等による臨時的な時間外労働」が認められています。

労基法33条の概要

 労働基準法33条を要約すると、「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合においては、企業は、労働基準監督署の許可を受けて、必要な限度の範囲で、時間外労働をさせることができる」とされ、また、同ただし書きでは、「事態が切迫して、労働基準監督署の許可を受ける暇がない場合には、事後に遅滞なく届け出る」ことも認められます。

適用上の注意点

 労基法33条を適用して、時間外労働をさせる場合には、次のような注意点があります。

・労基法33条を適用する場合でも、割増賃金の支払いは必要になります。

・労基法33条を適用する場合には、いわゆる上限規制が適用されませんが、それゆえ健康障害を防止する措置を講じる必要があります。

・「労基法33条による時間外労働を、従業員は拒否できるか」の問題について、就業規則等に「緊急で必要がある場合には、時間外労働を命ずる場合がある」旨を規定しているのであれば、従業員はその命令に従う義務があります。逆に、就業規則等にこれらの記載がない場合における従業員の義務については、「有り」とする説と「無い」とする説に分かれています。従って、仮に記載がない場合には、復旧作業等に従事する従業員から、個別の同意を得たほうが無難といえるでしょう。

「備えあれば患いなし」ですね

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