令和5年度租税滞納状況の概要

新規発生滞納額は約8,000億円

 国税庁は「令和5年度租税滞納状況の概要」で、滞納にまつわる各種情報を発信しています。ここで言う「滞納」とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたもののことです。

 資料によると、令和4年度末滞納整理中のものの額は8,949億円、令和5年度に新規発生した滞納額は7,997億円、整理済額は7,670億円、令和5年度末滞納整理中のものの額(次期繰越額)は9,276億円とのことです。

 こうして聞くととても大きな額の税金が滞納されているようですが、過去にさかのぼってみると、バブルが弾けた平成4年がピークで、その時の新規発生滞納額は1兆8,903億円で、令和5年度はピーク時の約4割となっています。また、令和5年度における滞納発生割合(新規発生滞納額÷徴収決定済額)は、1.0%で、ここ10年は同じ程度の割合で推移しており、申告等により課税されたものの99%は遅滞なく納付がされています。また、滞納が発生した中でも8割は徴収されていると発表しており、全体で99.8%は最終的には徴収がされているとしています。

滞納するとどうなる?

 税金を滞納すれば延滞税等がかかってくるのはご存じかと思いますが、税務署がどのようなアプローチをするのかというと、

①督促の前に「督促前納付指導」として、納税コールセンター等から電話が来る

②納期限から50日以内に督促状発行

③督促状発送から10日を経過した後に、滞納者の財産の差し押さえ・公売などを行う(換価)

という順序で行います。

滞納整理ができないものは訴訟も

 通常の滞納整理の手法では処理進展が図れないものは、訴訟等を行うこともあり、令和5年度においては、139件の原告訴訟を提起したことを公表しています。また、財産の隠蔽等の悪質な事案については告発を行う等の対応も行っており、令和5年度は8件の事案を告発しています。

 やむを得ず税金が払えない場合は、税務署に申請すれば財産売却や差押えなどの猶予が認められる場合もあります。督促を受ける前に税務署や専門家に相談しましょう。

過去、期限後納付があると納期限前に指導はがきや電話が来ることがありますが、これも税務署の滞納対策です。この時点での罰則はありません。

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小規模宅地等の特例-家なき子-

相続で子に居宅を引き継ぐとき、子は既に別居して生計を別にしているが、持ち家ではない場合、居住用宅地について一定の要件を満たすことにより、小規模宅地等の特例を適用して土地の評価額を最大80%(土地面積330㎡まで)減額して相続税の負担を軽減することができます。一般に「家なき子特例」と呼ばれますが、子に限らず親族に適用することができます。

被相続人の要件

  • 被相続人に配偶者がいないこと。
  • 相続開始の直前において被相続人と同居していた法定相続人がいないこと。

取得者の要件

  • 被相続人の居住用宅地を相続又は遺贈により取得すること。
  • 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと。
  • 相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと。
  • 相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
  • 相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること。

老人ホームに入居の場合

相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていなかった場合においても、相続開始の直前において要介護認定、要支援認定等を受けていたこと、老人福祉法等に規定する老人ホーム等に入居等をしていたこと、建物を事業の用、被相続人等以外の者の居住の用に供していないことの要件を満たすときは、入居等の直前まで被相続人の居住の用に供していた宅地等は特定居住用宅地等に該当し、先に掲げた要件を満たすときは特例の適用を受けることができます。

孫に遺贈することもできる

「家なき子特例」は被相続人の親族に適用されますので、子に既に持ち家がある場合は持ち家のない孫に居宅を遺贈し、先に掲げた要件を満たすときは、特例の適用を受けることができます。なお、孫は相続人ではないので相続税は2割加算となります。孫世帯の生活設計と合致すれば居宅を承継させる有効な方法となるかもしれません。

家なき子特例は、要件を満たせば持ち家のない孫にも適用できます。

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