労働基準法の代表的な帳簿とは

労働関係帳簿は労働時間や賃金払いに必須

 労働者を使用していると労働者名簿等の帳簿の作成や保存が必要です。各種の帳簿は労働時間管理や賃金支払い等には欠かせないもので、事業主には正しく作成・運用することが求められています。

義務付けられている法定4帳簿

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、年次有給休暇管理簿は法定4帳簿とも言われていて作成が必要です。

  • 労働者名簿(労基法107条)

労働者名簿は、本社や支店の各事業場において使用する労働者ごとに作成します。

労働者名簿には、氏名、生年月日、学歴や職歴、性別、住所、従事する業務、雇入年月日、退職年月日と退職理由等の項目を記載します。

  • 賃金台帳(労基法第108条)

賃金台帳は雇用される労働者について作成します。氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、時間外労働、深夜労働、休日労働の時間数、基本給、諸手当の種類と金額、控除項目と金額等の項目を記載します。

  • 出勤簿

出勤簿は労基法上には明記されていません。「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」において労基法の109条の「その他労働関係に関する重要な書類」に該当する書類とされています。労働安全衛生法(第66条8の3)でも出勤簿の作成と労働時間の把握をすることが事業主に課されています。

出勤簿には氏名、出勤日、出勤日の始業・終業時刻、休憩時間、時間外労働時間を記載します。労基法で労働時間の規定が適用除外とされている管理監督者は労働時間の記載は必要ありませんが、労働時間の把握は必要とされています。

  • 年次有給休暇管理簿

平成31年4月に実施された年5日の年次有給休暇取得義務化に伴い新たに作成義務が課されました。氏名、付与日、付与日数、取得日などを記載します。

 前述の4帳簿の保存期間は5年間とされていますが当面は3年間とされています。他に雇入れ、解雇、災害補償、賃金、労働関係重要書類も保存が義務付けられ、デジタルデータによる保存も認められています。

賃金台帳は国税通則法では7年保存とされています

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遺族年金「給付5年」は誤解?

誤解されている給付縮小

 厚労省は7月の社会保障審議会は30歳以上で夫を亡くした妻の遺族年金の受給期間を5年間にする見直し案を示しましたが、SNS上で「遺族年金改悪」「多くの女性が困窮する」などの批判が増えたということです。現行の遺族年金は、妻を亡くした夫が55歳未満だと受給権がなく、夫を亡くした妻が30歳未満だと5年のみ、30歳以上なら無期給付という仕組みです。誤解とも思われる意見もあり、何が誤解を生んでいるのかを見てみたいと思います。

改正案の趣旨

60歳未満で遺族厚生年金を受け取る際の要件の男女差の解消を目指すもので、5年間の有期給付となるのは20~50歳代で子がいない配偶者です。

誤解の内容を個別に見てみましょう

誤解その1………現在の高齢者も対象になる。現在遺族年金を受給している人、60歳以上で配偶者と死別した人は生涯受給できます。

誤解その2………子育て世代の遺族厚生年金がすべて5年間になってしまう。子育て中の配偶者の遺族年金は5年になります。ただ、世帯ベースでは子が18歳の年度末までは従来と同様の受給ができます。ただし夫が亡くなって5年過ぎ、子も18歳を過ぎれば受給権がなくなるので子の学費など備えは必要になりそうです。

誤解その3………受給期間5年の制度はすぐに導入されるというもの。これは男女で導入時期が違います。妻が死亡した夫は妻の死亡時夫55歳以上でないと受給権がなかった事項は改正施行時に55歳未満でも受給できるようになります。一方夫を亡くした妻は20年をかけて段階的に改定し、夫の死亡時60歳未満の妻までは5年の有期給付とされる予定です。中高年寡婦加算も縮小・廃止の方向です。

誤解その4………新たな仕組みの導入「死亡時分割」は婚姻期間中の加入実績をもとに残された配偶者の65歳以降の老齢厚生年金を上乗せ(上限あり)、5年有期化対象者向けで再婚しても受給できる、亡くなった方の老齢年金相当を支給する、収入要件年収850万円未満も有期の方には撤廃などの案が出ています。

今の若い世代の女性が将来影響を受けるかもしれません

 遺族年金の改正案は今すぐ影響を受けないかもしれませんが、妻が夫の遺族年金だけに頼らない収入基盤を作ることが重要になりそうです。

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