日本経済の救世主になれるかM&A促進税制

政府がM&Aに熱い視線

経済産業省は、1年ほど前に公開した「中小M&Aガイドライン」でM&Aの後押しをする姿勢を鮮明にしています。

「中小M&Aガイドライン」によると、2025年までに、平均引退年齢の70歳を超える中小企業の経営者が約245万人おり、うち半数の約127万人が後継者未定とのことです。

廃業による経営資源の散逸が積み重なることにより、優良な経営資源が活用されないまま喪失されてしまうことは、日本経済の発展にとって大きな損失との認識で、M&Aの普及がその対策として有効な切り札であり、生産性の向上にも資するとしています。そして、10年で60万、年平均10万のM&A契約を成就するとの計画を立てています。

計画実現のために役割喚起

 そのため、売り手・買い手を繋ぐM&A専門業者の活性化を期待するとともに、商工団体、金融機関、弁護士・公認会計士・税理士といった各分野の専門家に向けても、それぞれの分野別にM&A支援として期待される役割や留意点などを提示しています。

 M&A業界は、30年ほどの歴史の新興産業で、現在の専門業者数は300社程度とのことです。日税連もホームページでM&Aのマッチングをすすめています。

切り札としてのM&A促進税制

 令和3年度税制改正の中に、M&A促進税制が二つあります。

1.株式交付M&Aでの譲渡益繰延制度

2.M&A投資リスクに備えるための株式取得価額の70%損金算入制度

 株式交付の場合の譲渡益繰延制度創設は、2019年中に経産省が改正要望事項としてあげていたものですが、会社法の株式交付制度創設の施行予定が2021年3月1日となっていたので、1年遅れでの立法となりました。これは、売り手側への優遇税制です。

 もう一つの優遇税制は、買い手側に対するものです。

 M&A対価の70%損金算入の新制度の要件は次の内容です。

・青色申告中小企業者が対象

・経営力向上計画による取得

・株式の取得価額10億円以下

・投資損失準備金の計上

・6~10年経過時準備金の取崩し

・中小経営強化法改正が前提

・令和6年3月31日まで適用

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暦に従って計算するだけではない償却計算

2ヶ月の次は4ヶ月

 かつて、大学教授の方が、税務専門誌の質疑応答事例の中で、7月31日使用開始した減価償却資産の月数計算について、決算期末が9月30日だったら事業供用月数は2ヶ月となり、また、決算期末が10月31日だったら、事業供用月数は4ヶ月となる、と回答していた記事がありました。

理由は民法の定めによる計算

 償却限度額を計算する場合の「月数」とは、カレンダーの枚数を意味するものではなく、暦に従って計算するのであり、「暦に従って計算する」とは、民法第143条による計算であり、「応当する日の前日に満了」、応当日がない時は「その月の末日に満了」との規定に従うから、とのことでした。

 7月31日から9月30日までの間に含まれる「30日」は、8月30日と9月30日の2回なので、その月数は2となる、ということ、即ち、「7月31日から8月30日まで」の1ヶ月と「8月31日から9月30日まで」の1ヶ月との合計2ヶ月、ということです。

税の実務においては

 しかし、当局の監修を受けていると思われる減価償却の税務ソフトでも、7月31日使用開始で決算期末が9月30日の期間計算を2ヶ月と1日という計算で3ヶ月の償却計算をしています。先の大学教授の解釈にも一理あるかと思いますが、実務では、カレンダーの枚数による計算が主流のように思われます。

民法の規定の適用を徹底するなら

「暦に従って計算する」との民法規定を根拠に置くのだとすると、「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない」という民法第140条の規定も無視するわけにはいきません。

7月31日使用開始で決算期末が10月31日の期間計算では、初日不算入とすると8月1日から10月31日となり、3ヶ月ちょうどで、大学教授のいう4ヶ月にはなりません。期間の満了日は民法遵守で、初日については民法無視というのも、不合理です。

慣習法的実務解釈が定着か

1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とする

 国税通則法にも期間の計算の定めがあり、期間の初日不算入、期間の定めは暦に従う、応当日前日の満了と、民法と同じ規定になっていますが、減価償却の償却月数計算では、民法の規定に拠るのではなく、初日算入で、カレンダーの枚数に拠るという、税法の世界独自の解釈ルールがありそうです。

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