不動産の付合に注意

例えば、お父さんの所有する自宅建物につき、同居する息子さんがリフォームや増改築を行った場合、所有権の法律関係や税金の取扱いはどうなるでしょうか。

所有権はどうなる?

 お父さん世帯の居住スペースと息子さん世帯の居住スペースが完全に分離されている形態のリフォームであれば、区分所有登記をすることができます。しかし、そうでない場合は、リフォーム代を息子さんが負担していたとしても、リフォーム部分の所有権は自宅建物を所有するお父さんに帰属することとなります(民法242条)。これを不動産の付合といいます。

このため、息子さんはお父さんに対してリフォーム費用を請求することができます(民法248条)。

税務上の取扱い

 もし、このリフォーム費用をお父さんに請求しなかった場合は、「その他の利益の享受」として、贈与があったものとみなされてしまいます(相続税法9条)。でも、お父さんは年金しか収入がなく、働き盛りの息子さんが費用を負担したい……そんな場合はどうすればいいでしょうか。

 このような場合、自宅のリフォーム前に自宅の所有権の一部を息子さんに譲渡し、その後息子さんがリフォームを行う方法があります。そして、息子さんがお父さんに支払うべき譲渡代金と、リフォーム代のうちお父さんが負担すべき金額を相殺します。

 例えば、リフォーム前の建物の時価が1000万円、リフォーム代が1000万円とした場合、リフォーム前に2分の1の持ち分を息子さんに譲渡します。こうすれば、息子さんが払うべき譲渡代金は建物時価1000万円☓1/2=500万円、お父さんが負担すべきリフォーム代はリフォーム代1000万円☓1/2=500万円となり、これらを相殺することにより贈与税の課税関係は生じないこととなります。

この事例は国税庁ホームページの「質疑応答事例」にも掲載されています。この場合、お父さんに譲渡所得が生じるデメリットがありますが、息子さんにはその他の要件を満たせば増改築の場合の住宅ローン控除を受けられる可能性が出てきます。

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複式簿記3つの発明

「複式簿記は人類最大の発明」

と、ゲーテが言ったか言わなかったかは、定かではありませんが、非常によくできた財産の管理システムであることは確かです。

  • 第1の発明は「貸借均衡の原則」による財産の管理です。

車を買ったような場合、車という財産は増えますが、購入することによって現預金は減少します。また借金をしたような場合、現預金は増えますが、借入金という負の財産も増えます。複式簿記では以下のように表示します。

(車両) 1,000 /(現預金)1,000

(現預金)5,000 /(借入金)5,000

  • 第2の発明は「名目勘定」です。

①では、財産の管理ですから、実在する財産(負の財産も含む)科目しかありません。しかし商売を始めるとそれでは貸借の均衡が保てない場合が生じます。

600で購入した商品を1,000で売ったような場合です。減少する財産は商品600ですが、増加する財産は現預金1,000となり貸借均衡が崩れます。そこで発明されたのが費用や収益といった名目勘定です。複式簿記では以下のように表示します。

(現預金)1,000 /(商品) 600

       /(商品販売益)400

また飲み食いで散財したような場合、現預金は減少しますがそれに見合った財産は増えません。複式簿記では以下となります。

(交際費)300 /(現預金)300

  • 第3の発明は「資本勘定」です。

航海貿易が始まると今度は1回の航海でどれだけ儲かったかを知りたくなり、一会計期間という概念が出てきます。会計期間を区切ると、実在する財産科目は次の会計期間に繰越しますが、費用や収益といった名目勘定は実在しませんから、次の会計期間では0スタートとなり、そこで貸借均衡が崩れることとなります。上記②の例でいうと以下となります。

(現預金)1,000 /(商品) 600

        /(現預金)300

は翌期へ繰り越しますが、

(交際費)300と(商品販売益)400

は次の会計期間では0スタートとなります。

そこで発明されたのが資本です。商品販売益と交際費の差額は繰越利益剰余金(資本)100として翌期に繰り越されます。これで貸借均衡が保てます。

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