在職老齢年金制度の支給停止額の見直し

働きながら老齢年金を受ける在職老齢年金

 厚生年金保険が適用される会社で勤務する70歳未満の方は年金受給者でも厚生年金に加入します。この場合老齢基礎年金は全額支給されますが、老齢厚生年金は一部または全額が支給停止されることがあります。以前は65歳未満の方と65歳以上の方の在職老齢年金では異なる仕組みで支給停止額が計算されていました。令和4年4月から両方同じ仕組みで計算されるようになりました。

令和7年度の支給停止額の計算方法

 老齢厚生年金の年額の12分の1の「基本月額」を算出し、毎月の賃金(標準報酬月額の1年分)の合計額と賞与の1年分の合計額を足し、12分の1で除し「総報酬月額相当額」を出し、年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が51万円以下であれば年金は全額支給されます。51万円を超えるときは1か月当たり下記の金額が支給停止されます。

「基本月額」+「総報酬月額相当額」-51万円×1/2

今後の支給停止基準の額の変更

厚生年金が支給停止となる基準額を、令和8年度から、月額62万円に引き上げることが予定されています。

その他の支給停止の場合

1.加給年金が加算されている場合……老齢厚生年金に加給年金額が加算されている場合、加給年金は除いて在職老齢年金を計算します。老齢厚生年金が全額支給停止される場合には加給年金額も全額支給停止になります。

2.70歳以降の支給停止……70歳以降も厚生年金保険の適用事業所に勤務している方は厚生年金加入中の方と同様に在職老齢年金の仕組みによる支給停止となります。

3.高年齢雇用継続給付による支給停止……雇用保険の加入期間が5年以上である60歳から65歳未満の加入者に対して賃金額が60歳時の75%未満となった方に最高で賃金月額の10%に相当する額が支給されるものです。高年齢雇用継続給付を受けると標準報酬月額の4%が支給停止されます。

働く高齢者は増えています

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海外勤務中の株式譲渡(日本で課税の場合・課税されない場合)

海外勤務者は非居住者

 外務省の令和6年(2024年)10月1日現在の海外在留邦人数調査統計によると長期滞在者(海外勤務者)は71万2,713人です。

 給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。非居住者の場合、日本で課税を受けるのは国内源泉所得のみとされています。

海外勤務中に株式を譲渡した場合

給与所得者が海外勤務中であれば、一般的には恒久的施設を有しない非居住者に該当します。恒久的施設を有しない非居住者が株式等を譲渡した場合、次の1から6のいずれかに該当する所得が申告対象の国内源泉所得として課税対象となります。

1 買集めによる株式等の譲渡による所得

2 事業譲渡類似株式等の譲渡による所得

3 税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡の所得

4 不動産関連法人の一定の株式の譲渡による所得

5 日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得

6 日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得

 1と2と4は特殊なケースと考えられますが、3と5と6は実際に身近に起こりそうな譲渡ではないでしょうか。

 1から5に該当するものについては、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分し、他の所得の金額と区分して税金を計算する申告分離課税となり、6に該当するものについては総合課税の対象となります。これらに該当する場合は確定申告が必要です。

租税条約により日本では課税されない場合

 租税条約は関連国内法規に優先してその効力を有すると理解されています。そのため、海外勤務者が居住する国と日本国との間に租税条約(協定)があれば、それに従うことになります。

 たとえば、香港居住者の普通の株式譲渡(不動産関連や事業譲渡類似を除く)は、日・香租税協定により日本国内では課税されません。シンガポールの場合も然りです。

 一方、租税条約が結ばれていなかったり、モナコなどのように執行共助条約のみしか結ばれていなかったりの場合は、所得税法の原則通り日本で課税されます。

課税関係については、まずは日本の税法の規定に従い、その後租税条約の適用を考えます。 

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