嵐の中でも倒れない 早期経営改善計画という羅針盤

コスト高の波が静かに経営を削る

2026年の春、中小企業の経営者が静かに頭を悩ませているコスト問題が2つあります。1つは、金利の上昇です。日本銀行は追加利上げの方針を継続しており、変動金利で借入を行っている企業では、じわりと返済負担が重くなっています。もう1つは、人件費の高騰です。2026年の春闘では賃上げ率が5%を超える水準で推移しており、中小企業も採用・定着のために賃上げを迫られています。価格転嫁が思うように進まない中で、この2つのコスト増が重なれば、利益を圧迫するだけでなく、資金繰りにも影響が出かねません。

「問題ない」と思う今が最大の油断

こうした環境変化は、じわじわと経営を侵食していくのが恐ろしいところです。特に注意したいのが、日々の業務に追われて現状把握が後手に回るケースです。「売上はなんとか維持できている」「銀行借入の返済に遅れているわけではない」という状況でも、原価率が気づかないうちに上昇し、手元のキャッシュが徐々に細っているということは珍しくありません。問題が表面化してからでは、打てる手が大幅に限られてしまいます。嵐が来る前に、自社の体力と地図を確認しておくことが肝要です。

国が費用を負担する「定期健診」制度

こうした事態に備えるために、国は「早期経営改善計画策定支援事業」という制度を設けています。これは認定経営革新等支援機関の支援を受けてビジネスモデルの俯瞰図・資金繰り計画・アクションプランを策定する際に、費用の3分の2(上限25万円)を国が負担してくれます。重要なのは、「今すぐ銀行支援が必要な状況ではない」段階の企業こそ適している点です。いわば経営の「定期健康診断」として、早めに活用いただきたい制度です。

計画が嵐を乗り越える武器になる

外部環境の嵐が過ぎるのをただ待つのは、経営者の選択肢ではありません。まずは認定支援機関に声をかけ、自社のビジネスモデルを第三者の目で点検することから始めてください。ビジネスモデル俯瞰図を1枚作成するだけでも、強み・弱み・潜在リスクが驚くほど鮮明になります。計画を立て、モニタリングし、変化に機敏に対応できる体制を整えることが、荒波を乗り越える経営者の武器になります。

経営危機を感じる前に会社の健康診断を受け、早めの対策を検討しましょう!

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退職金化も対策です

M&Aで今年だけの富裕者所得

 何十年にもわたり育み成長させてきた会社をM&Aで売却することになったら、何十億円かの値段になったりします。しかし、この値段は、何十年にもわたる長期所得そのものなのに何の配慮もなく、その年だけ臨時に富裕層課税対策の対象にされてしまいます。

そんな中で、唯一、検討可能なのは、M&A価格の一部の退職金化です。それが、ミニマム税制度の適用において、どんな効果を発揮するか、検討します。

シミュレーションしてみると

10億円のM&Aで、40年勤続2,200万円の退職所得控除の場合の試算です。

株式代価 退職金 所得税計 ミニ税

10億円  0   1.50億円 1.005億円

9億円  1億円 1.48億円  0.844億円

8億円  2億円 1.55億円 0.619億円

7億円  3億円 1.63億円 0.395億円

6億円  4億円 1.70億円 0.170億円

5億円  5億円 1.77億円   0円

4億円  6億円 1.85億円   0円

3億円  7億円 1.93億円   0円

2億円  8億円 2.00億円   0円

1億円  9億円 2.08億円   0円

 所得税計とミニマム税との合計は、ミニマム税が0になったところで、最低で、その後増加します。

 ミニマム税に対しては、この通り、退職金化が効果を発揮することの確認ができます。効果の主因は、退職所得が2分の1課税なので、所得全体を圧縮するからです。

ミニマム税算式を組み替える

もっと、一般化した情報にしたいと思います。次は、令和9年以降のミニマム税算式です。

(A)基準所得金額:(B)基準所得税額

ミニマム税=(A-1.65億円)×30%-B

 M&A価格Y、退職給与X、(Y-X)を株式譲渡価格、退職所得控除Kとして、算式中のAを、<(Y-X)+(X-K)÷2>に置き換え、Bを<0.15(Y-X)+0.45(X-K)÷2-4,796,000>に置き換えます。

置き換え後、ミニマム税を0として、算式を展開整理すると、次式に整理されます

X=(0.15Y+0.075K-44,704,000)÷0.225

 この算式に、Y=10億円、K=2,200万円を代入すると、X≒4.75億円になります。この時、手取額が最大になります。

もちろん、退職給与の額について、不相当高額該当か否かのチェックは必要です。

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