即時償却と税額控除の選択

優遇税制としての節税制度
即時償却を含む特別償却と税額控除とが選択適用となっているものは幾つもあります。例えば、昨年の税制改正で2年間の期間延長された中小企業者等の特定経営力向上設備等取得における税制優遇制度においては、即時償却か税額控除かのいずれかの選択が認められています。即時償却は、購入資産の事業供用時に取得価額全額を減価償却するというものです。他方、税額控除は、通常の減価償却を行う外、特定経営力向上設備等取得の制度では10%の税額控除が認められています。
節税額の多寡で判断すれば
即時償却と税額控除との選択においては、税額控除が選択されるケースが多いと思われます。優遇税制としての即時償却は課税の免除や非課税ということではなく課税の繰り延べにすぎないのに対して、税額控除は純粋の課税免除だからです。減価償却という費用計上による税額の減少の外に、特典的に税額の減少が認められるので、税額減少額総額は税額控除の方が多いからです。
経営効率から判断すればただし、それは減価償却耐用年数期間全
体を通しての話で、取得からの早い時期での耐用年数期間に於いては、即時償却の方が税額減少額の総額が多くなります。即時償却に於いては、当初での税額減少効果が大きく、投資資金の早期回収効果、資金繰り効果、キャッシュフローの割引現在価値効果による有利性が認められます。また、税額控除の場合、実際に控除できるのは、その償却資産取得期の法人税の20%を上限とするという制限があるので、認められている10%の控除額の一部しか適用にならない、ということになることもあります。
リスクヘッジで判断すれば投資リスクを考慮すると、税額控除よりも即時償却の方に軍配を挙げるべき、という考えを無視できません。リーマンショックの時は、売り上げが何分の1かになってしまい、経営の回復に何年もかかった、と
いう企業は少なくありませんでした。そして今また、新型コロナウィルスショックが起き、日本経済も世界経済も急激な減速局面に入っています。その沈静化の予測は当面付きそうにありません。こういう局面こそ、即時償却か税額控除かの選択判断で、投資リスク回避を中心に据える時なのかもしれません。

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老人ホーム入居一時金の贈与

夫婦間での生活費のやり取りと税金
贈与税の非課税規定において、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものは非課税とする」と定められています。
夫婦間での生活費のやり取りは、当たり前に税金など意識せずに行っております。
不動産や多額の資金の移動の原則と特例扶養義務を果たすためとはいえ、生活費
はその都度負担が原則で、多額の金銭を子供名義の預金に一括で振り込むとかの現金の移動は、課税贈与行為と通達されています。生活用不動産の共有化も、非課税の範囲を超える贈与行為となります。
とはいえ、世の中の変化に対応して税制も、居住用不動産又はその取得資金の配偶者間贈与、教育資金、結婚・子育て資金、住宅取得資金の直系尊属からの一括贈与、を可能にするような特例措置が講じられてき
ています。
老人ホーム入居金は不動産的で一括だが老齢化社会になり、老人ホームへ入居す
る際の入居金の一時払いを扶養義務者が負担する、という場合はどうでしょうか。
終身居住権を確保するためなので、性格は不動産の取得性を帯び、月々償却費消されていく前払金的性格を有し、元本の提供に近いような性格を有するものの、通常の生活を維持するための生活保持義務の履行でもあり、贈与税課税は憚られそうです。
老人ホーム入居資金提供扶養義務者の死亡時に、一時払い入居金の未償却部分が算定し得る、としてなされた相続税の更正処分は、審判所の裁決で課税否認とされている事例があります。
課税とされた事例もあるがネットで検索しただけで、有料老人ホー
ムへの入居一時金が数億円というものの存在も確認されます。
老人ホーム入居一時金が1.3 億円という事例では、3年内贈与に該当するとして、贈与課税されて、最高裁まで争っていますが、納税者敗訴となっています。
生活維持費は各人各様なので、単純に金額水準だけで、可否判定はしにくいし、入居一時金支払時の贈与というのも担税力や課税実務の実態にそぐわないし、資金支払者死亡時の未償却金の認定も計算上の数字に過ぎず、小規模宅地特例や居住不動産贈与の配偶者非課税特例とのバランスも考慮されるべき、と思われます。

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