70%損金算入の税制

施行されたのか、未だなのか

令和3年度税制改正の「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」が令和3年8月2日に施行されました。

この施行は、改正産業競争力強化法等一括法の施行日からとされていたためか、財務省や国税庁での案内はなく、この施行を広報したのは、中小企業庁でした。

なお、一括改正法の施行は、法公布日(6月16日)、公布後1ヶ月以内、3ヶ月以内、1年以内、と分かれていたので、経営資源集約化税制の施行と関連のあるものの施行の判別が分かりにくい状態でした。

中小企業庁が主導しての推進

中小企業庁は、8月2日に、「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」を公表しました。

先の施行日を待っていたような対応で、中小企業庁の主導の下での「経営力向上計画」認定申請等の様々な手続きを経る必要があります、という案内をし始めました。

中小企業事業再編投資損失準備金制度

この税制は、令和6年3月31日までに株式取得によってM&Aを実施する場合(取得価額10億円以下に限る)に、株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の70%以下の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入される、というものです。

ただし、この準備金は、積み立て後5年を経過した事業年度以降5年間で準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入します。

税制によるリスク対策支援措置

この制度創設の趣旨については、税制改正大綱は、「その株式等の価格の低落による損失に備えるため」とし、財務省の税制改正パンフレットは、「M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から」とし、「税制改正の解説」も、中小企業M&A市場の未成熟さや費用負担の困難性が生む投資リスクに備える為の支援措置だ、としています。

準備金の臨時取崩しでの益金算入

 準備金の任意取崩し、経営力向上計画の認定取消し、本税制対象子会社の解散・合併消滅、その株式の帳簿価額の減額(評価減や資本剰余金分配など)、その株式の譲渡、青色申告の取消し、等々の場合には、準備金の全部又は一部の取崩しをし、益金算入することになります。

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国税のスマホ決済延期

令和4年1月4日に間に合わない

 国税庁は令和3年9月21日、3年度税制改正で発表していたスマートフォンを利用した決済サービスを、4年1月4日からの開始としていたところ、4年12月に延期することを明らかにしました。

 令和3年6月に、スマホアプリ納付を実現するために必要なシステムなどを構築する事業者の調達手続きを行ったところ、新型コロナウイルス感染症の中、デジタル投資の加速に伴うICT人材不足等もあり、入札者が現れず、事業者の決定に至らなかったようです。

地方税は先に導入が進んでいる

 地方税を見てみると、各都道府県・市区町村によって取扱いの決済アプリの種類は異なるものの、スマホ払いで普通徴収の都道府県・市区町村民税や軽自動車税、国民健康保険料等が支払えるサービスが進んでいます。利用できる決済アプリは自治体によって異なるものの、PayPay、LINE Pay、PayB、楽天銀行アプリ、銀行Pay(ゆうちょPay)、au PAY、FamiPayなど、多岐にわたります。導入の数を見てみると、市井でのシェアの高いPayPayとLINE Payの採用が多いようです。

 地方税でのスマホ決済の普及は令和元年10月に「地方税共通納税システム」が導入され、電子申告に加えて電子納税が可能になり、自治体の事務負担が軽減されたことも背景にあるようです。

IT人材の不足は深刻?

 経済産業省の調査によると、令和12年にはIT人材の不足数が最大で79万人になるという試算が出ています。これはIT業界の急成長、スマートフォンの台頭をはじめとしたIT技術の急速な変化、少子高齢化による人材不足等が原因とされています。エンジニア不足への対策として、企業では採用年齢の引き上げや待遇改善を打ち出し、政府対応としては2年度から小学校でのプログラミング教育が必修化されましたが、現状国税のスマホ決済システムの構築に至れなかった事実があり、IT人材の不足は深刻なのかもしれません。

納期と予算の問題もあるとは思います。

国税庁は税務行政のデジタルトランスフォーメーションを掲げていますが、解決すべき課題は外的環境にも多く存在しています。

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