副業・兼業における労働時間管理

副業・兼業をする雇用者が増加

 厚生労働省は2018年1月以降、「モデル就業規則」に「副業・兼業」という章を追加し、副業・兼業を原則容認する内容に変更しています。

 厚生労働省によれば、副業を希望する雇用者数(雇用者に占める割合)は、1992年の235万人(4.5%)から2017年385万人(6.5%)へ右肩上がりで伸びており、副業雇用者数も、1992年の76万人から2017年には129万人へ増えています。

労働基準法改正による労働時間管理

 中小企業には2020年4月(大企業は2019年4月)から、時間外労働の上限規制(罰則あり)が適用されています。

 36協定による原則の上限時間(月45時間、年360時間)を超える場合は、36協定で特別条項を締結することにより、月100時間未満、2~6月平均80時間以下、年720時間以下までの時間外労働が認められます。

 労働基準法38条1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、(中略)通算する」としており、事業主(会社)が異なる場合でも通算されます。

 なお、労働基準法上の労働者でない場合(フリー、独立・起業、共同経営など)や、労働時間規制が適用されない場合(農業・畜産業・水産業、管理監督者など)は、労働時間を通算する必要はありません。

副業・兼業での労働時間管理

 副業・兼業における原則的な労働時間管理のポイントは雇用契約を結んだ順番です。

 例えば、A社(1日5時間、残業なし)で雇用されている労働者が、新たにB社(1日3時間、残業2時間)で雇用された場合、1日のうち、B社で勤務後にA社で勤務したとしても、後で雇用契約を結んだB社の2時間が時間外労働となります。

 なお、副業・兼業開始前に両社の合計所定労働時間を法定内で設定する「管理モデル」を導入した場合は、法定労働時間を超えた時間に働いている会社で割増賃金が発生することになります。

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従業員の配偶者に対する健診費用の会社負担

従業員に対する健康診断は会社の義務

 労働安全衛生法66条により、「事業者は、労働者に対し医師による健康診断を行わなければならず、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければならない」とされています。こうした健康診断の受診費用は、通常必要と認められる範囲を超えるものを除き、会社の福利厚生費として扱われます。

なお、労働者ではない役員は、厳密に言うと労働安全衛生法の対象者ではありません。しかしながら、健康管理義務がないわけではありませんので、法律上での義務がなくても健康診断を受診してもらうことで、実務上のリスクを下げることができるため、同様に会社の福利厚生費となります。

 ただし、受診費用の負担対象者が役員や特定の地位にある者だけとされている場合には、その者に対しての給与として課税されます。この場合には、経済的利益に係る給与として源泉徴収を行う必要が生じます。さらに、役員の場合、定期同額給与に該当しない給与(賞与)として法人税の課税対象として扱われることにもなります。

役員・使用人の配偶者の健診費用会社負担

会社が役員または使用人の配偶者分の健診費用を負担している場合には、その役員または使用人の給与(経済的利益の供与)として扱われます。課税扱いとなる理由は、会社は、法律上、配偶者の健康診断の実施義務を負っているわけではないためです。

また、一部大企業では配偶者分も会社負担となっているところもあるようですが、まだまだ社会一般的に行われているとは認められていないため、経済的利益の供与=給与扱いとなります。給与扱いとなるわけですから、それに係る所得税の源泉徴収を忘れないようにしなければなりません。

健診費用の消費税での課税仕入れ不課税

 会社の福利厚生費として扱われる健診費用は、自由診療に該当するため、消費税が課税されています。消費税の計算においては課税仕入れとして扱います。

 一方、給与扱いとなる健診負担分(配偶者や特定の地位にある者だけへの負担)にも、消費税は課されています。しかしながら勘定科目上は給与扱いですので、消費税の計算においては給与=不課税となります。領収書に消費税額の記載があるからと言って、課税仕入れとして扱わないように注意が必要です。

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