中小企業庁「中小M&A推進計画」

いよいよ加速、M&A支援施策

中小企業庁は、今年の税制改正の目玉でもあったM&A促進税制の施行と関係する改正中小企業等経営強化法が国会で審議される前の今年4月中に、今後5年間にM&A促進のために官民の取組みとして実施すべき「中小M&A推進計画」を取りまとめました。

後継者不在の廃業のうち6割は黒字

それによると、後継者不在の中小企業は、仮に黒字経営であったとしても廃業等を選択せざるを得ず、近年の廃業件数は増加傾向にあったようです。

2020年は感染症の影響もあって過去最多の49,698件となったものの、廃業事業者のうち黒字廃業の比率は約6割もの水準です。

廃業中小企業のもつ貴重な経営資源が散逸してしまっていると分析し、それを回避する方策としてのM&Aの重要性が高まっているとしています。

中小企業の経営資源活用にM&A

M&Aによって、譲渡側・譲受側ともに、他者の保有する経営資源を活用することで、①規模の拡大によるコア事業の強化・拡大

②垂直統合によるコア事業の強化・拡大

③新規ビジネスへの参入 ④成熟・衰退事業の再編 ⑤グループ内再編 などを早期に実現する効果が期待される、とのことです。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)を含め、従来の経営スタイルからの発展や、従業員の意識改革等の効果も期待される、としています。

実際、M&Aによって経営資源の集約化を行った中小企業は、そうでない企業に比べて生産性等の向上を実現しているとの調査もあります。

潜在的なM&A譲渡者60万者

中小M&Aは年間3~4千件実施されている一方、潜在的な譲渡側は約60万者(成長志向型 8.4万者、事業承継型 30.6万者、経営資源引継ぎ型 18.7万者)とのことで、取組みへの余地、期待の可能性は大きいようです。また、M&Aのみならず、経営資源を引き継いで創業する「経営資源引継ぎ型創業」を希望する者も少なくない、と報告されています。

M&A促進の具体的施策

取組みとしては、M&A促進税制のほか、登録M&A促進機関の制度創設、M&A促進補助金の開始、各都道府県に設置の事業承継・引継ぎ支援センターの活動充実、等々があります。

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70%損金算入の税制

施行されたのか、未だなのか

令和3年度税制改正の「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」が令和3年8月2日に施行されました。

この施行は、改正産業競争力強化法等一括法の施行日からとされていたためか、財務省や国税庁での案内はなく、この施行を広報したのは、中小企業庁でした。

なお、一括改正法の施行は、法公布日(6月16日)、公布後1ヶ月以内、3ヶ月以内、1年以内、と分かれていたので、経営資源集約化税制の施行と関連のあるものの施行の判別が分かりにくい状態でした。

中小企業庁が主導しての推進

中小企業庁は、8月2日に、「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」を公表しました。

先の施行日を待っていたような対応で、中小企業庁の主導の下での「経営力向上計画」認定申請等の様々な手続きを経る必要があります、という案内をし始めました。

中小企業事業再編投資損失準備金制度

この税制は、令和6年3月31日までに株式取得によってM&Aを実施する場合(取得価額10億円以下に限る)に、株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の70%以下の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入される、というものです。

ただし、この準備金は、積み立て後5年を経過した事業年度以降5年間で準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入します。

税制によるリスク対策支援措置

この制度創設の趣旨については、税制改正大綱は、「その株式等の価格の低落による損失に備えるため」とし、財務省の税制改正パンフレットは、「M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から」とし、「税制改正の解説」も、中小企業M&A市場の未成熟さや費用負担の困難性が生む投資リスクに備える為の支援措置だ、としています。

準備金の臨時取崩しでの益金算入

 準備金の任意取崩し、経営力向上計画の認定取消し、本税制対象子会社の解散・合併消滅、その株式の帳簿価額の減額(評価減や資本剰余金分配など)、その株式の譲渡、青色申告の取消し、等々の場合には、準備金の全部又は一部の取崩しをし、益金算入することになります。

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