どちらが有利? 税込経理・税抜経理

判定し易いケースの想定

高額な資産、たとえば事業用ビル一棟買いをした場合などを想定してみましょう。

税込価格11億円で取得、減価償却計算の耐用年数を50年とします。

<税込経理の場合>

建物 11億円/現金 11億円

未収還付消費税 1億円/雑収入 1億円

減価償却費 2200万円/建物 2200万円

<税抜経理の場合>

建物 10億円/現金 11億円

仮払消費税 1億円/

減価償却費 2000万円/建物 2000万円

減価償却費と還付消費税を考えると

税込経理の場合、消費税還付金1億円が収益として処理され、法人税・所得税計算上、課税所得となります。逆に、減価償却費が増えて、当初の課税を後の耐用年数期間で取り戻していきます。長期的には損得ないことになりますが、金利的・資金計画的には税込経理が不利です。

高級絵画を購入した場合を想定すると、絵画は減価償却できませんから、売却するまで消費税部分は費用にならず、売却がないとすると、永久に取り戻せません。

選択はいつでも任意

消費税の経理処理としては、税込経理と税抜経理どちらの方式を選択してもよいことになっています。

そして、どちらの方法を選んでも年間の消費税負担は同じです。

減価償却資産の取得がなければ、会計上の利益も、税込経理の場合、期末で確定する消費税の額を未払金として計上すると、税抜経理の時と基本的に同じになります。

ただし、税込経理、税抜経理の変更をすると、会計データの期間比較性を損なうことになります。

なお、税込経理、税抜経理には、次のようなメリット・デメリットがあります。

例えば税込経理では……

  • 交際費の額が大きくなり不利。
  • 償却資産税の課税標準が大きくなり、税額も増加するので不利。
  • 少額減価償却資産等の30万円(または20or10万円)未満の判定では不利。
  • 特別償却や税額控除の判定では×××万円以上という要件が多いので有利。
  • 売上金額を大きく見せるのに有利。
  • 経理処理方法が簡便なので有利。
  • 控除対象外消費税が生じないので、その知識が不要につき有利。

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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)

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営業活動禁止の清算中に消費税の課税売上が発生する事例

会社解散で消費税課税売上と申告はなし?

会社を解散し清算期間となれば営業活動等はできません。解散会社ができるのは、債権(売掛金など)の取り立て、債務(買掛金・未払金など)の弁済等に限られます。

営業活動がなければ、通常の売上にかかる消費税の課税売上は発生しません。「課税売上がなく」かつ「納付税額がない」場合、申告書の提出義務は生じません。また、清算期間中の諸経費は、課税・非課税共通経費となり、課税売上割合がゼロとなれば、仕入税額控除できる金額もゼロとなり、還付金額も発生しません。 

申告不要ということでしょうか?

営業売上なしでも課税売上発生の可能性有

営業活動が禁止されていても、残っている資産をお金に換えるために財産の換価処分が行われることがあります。たとえば、残ったパソコンを売却して現金に換えた等の場合であり、課税売上となります。

清算期間中の非課税売上は、土地の売却があれば別ですが、せいぜい銀行預金の解約時の利息程度でしょう。そうなると、課税売上割合が高くなって仕入税額控除にできる清算の諸経費の割合も高くなります。

課税売上にかかる消費税と仕入控除できる消費税額とを比較し、前者が大きければ申告・納税義務となります。後者が大きければ、還付申告できることとなります。

税法の規定で課税売上が発生する特殊例

資産売却以外でも課税売上が発生することがあります。税法規定が原因で、課税売上が発生する場合です。たとえば、①仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の控除の特例、②課税業務用調整対象固定資産を非課税業務用に転用した場合の消費税額の調整、③課税業務用調整対象固定資産を非課税業務用に転用したことで調整、④貸倒れ控除を受けた貸倒れについてその貸倒れ債権の全部又は一部を回収した場合、⑤直近の解散事業年度に未確定だった売上が清算事業年度に確定して実際に譲渡した課税期間の見積計上額を上回る差額に対応する税額が発生する場合、などです。

こうなるともう税法の細かな規定の話です。ようやく清算手続き業務が終わったとほっとしたタイミングで税務署から問い合わせが来て困らないように、清算手続きはやはり専門家(会社法は弁護士・司法書士、税金は税理士)に任せるべきと言えます。

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