赤字でも納税の消費税は予納ダイレクト利用で先払いを⁉

消費税は滞納の多い税目

 消費税は滞納の多い税金です。令和3年8月に国税庁から発表された令和2年度の滞納状況でも、新規発生滞納額が全税目の半分以上を占めていました。

 消費税は、商品や役務提供の対価の一部であり、売上時には、本体部分である売上(損益項目)と預かり部分である仮受消費税(負債)を分けて会計計上します。仕入や経費発生時には、本体部分である仕入・経費(損益項目)と前払い部分である仮払消費税(資産)に分けて計上します。税金計算では、原則として、仮受消費税と仮払消費税との差額が納付すべき税額として計算されます。この差額部分の現金的裏付け(=納税資金として確保しておくこと)がなく、受け取った仮受消費税部分も事業資金に投入されてしまっていると納税時に腐心することとなります。

ダイレクト納付を利用した予納のススメ

 事業を継続していると、前年度基準から、ある程度今年度の消費税の納付予想額も見えて来るはずです。この分を事業用資金とは別の口座(=納税準備預金など)に寄せておければ安心です。しかしながら、実際には手元にあるお金ですから、事業資金がひっ迫するとどうしても手を付けてしまいがちです。これに対抗するには解約できない外部に預けてしまうしかありません。

そこで活用できそうな制度が、ダイレクト納付を利用した予納です。これは、毎月の均等額納付も可能ですし、または、収入に応じた任意のタイミングで納付することも可能です。自社の事業が季節的な売上の増減がある場合には、年間で一番お金の入ってきたタイミングで、中間申告に関係なく、納付できます。消費税納税で苦慮した経験がある場合には、一度ご検討ください。

ダイレクト納付のメリット

ダイレクト納付は、事前に振替納税される口座を登録しておき、即時もしくは指定日に税金が振替納税される手続です。

電子申告等の後、簡単な操作で納付手続が完了します。また、税理士が納税者に代わって納付手続を行うことも可能です。自社でインターネットバンキングの契約がない場合にも使えます。源泉所得税等の毎月の納付手続など、特に利用回数の多い手続に便利だとされています。

不便なら使うのを止めればよいだけです。継続性は求められていませんのでお試しして損はありません。

ダイレクト予納納付をしてしまうと手許にお金は残りません。万一の資金需要に備えるかどうか、よく検討してから進めましょう。

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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)

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消費税の中間申告~新年度に確認すべきことと失念対策~

消費税の中間申告と納税

 事業者は、前課税期間(個人の場合は前年、法人の場合は前事業年度)の消費税の年税額(地方消費税額は含みません)が一定額を超える場合、消費税の中間申告と納税をしなければなりません。中間申告の回数は、直税課税期間の年税額に応じ、48万円超は年1回、400万円超は年3回、4,800万円超は年11回です。

 前課税期間の確定申告が終わった時点で、新年度の中間申告の回数と申告納付の時期が確定します。前課税期間の消費税が増え、中間申告すべき回数が増える場合には、申告納付を失念しないよう留意が必要です。法人税の中間申告は前期の税額にかかわらず年1回です。中間申告は6か月経過後から2か月以内という固定観念をお持ちの場合、特に注意が必要です。

前期間基準の場合申告なしでも納税額確定

 中間申告の方法は、前期間基準による申告と仮決算に基づく2つの方法があります。中間申告期限までに申告書の提出がなかった場合には、前課税期間基準による申告書の提出があったものとみなされる特例が設けられています。そのため、申告書の提出を失念した場合、前課税期間基準による納税額が確定しています。納付が遅れると、期限後納付として延滞金等が発生します。

電子申告なら「お知らせ」メッセージ有

 国税庁では、e-Taxで法人税申告書を提出した法人に対し、行政経費の削減に努めるため、法人税の予定申告書用紙を送付しないこととしています。消費税は、当面、中間申告書用紙が送付されることとなっています。が、法人の電子申告利用率が法人税および消費税とも令和2年度で85%(令和3年10月発表)を超えたことを鑑みると、そのうち廃止されるものと思われます。

 中間申告が必要であるという概念が抜け落ちているときに届いた税務署からの郵送物は、開封されぬまま放置されたりゴミ箱行きとなってしまっていたりのケースもありました。前年分の申告を電子申告で行っていれば、中間申告対象期間の翌月の初日には、「消費税中間申告書提出についてのお知らせ」がe-Taxのメッセージボックスに格納されます。そして、e-Taxの利用者登録情報に、会社担当者のメールアドレスと会計事務所のメールアドレスを登録しておくと、e-Taxメッセージが格納されたことが通知されます。会社と会計事務所のダブル体制でうっかり失念の回避対策が図れます。

大法人の電子申告義務化は令和2年4月1日以後に開始する事業年度(課税期間)から適用されています。そのうち全社必須になるかも。

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