借り上げ社宅の社会保険料-現物給与価額は厚労省告示

社宅使用料は所得税法と社会保険法で違う

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、標準報酬月額を設定し、保険料の額や保険給付の額を計算します。標準報酬の対象となる報酬は、基本給のほか、残業手当等諸手当、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。社宅などの住宅の貸与も現物支給に含まれます。

 所得税法では、その物件建物の固定資産税の課税標準額をもとに所定の計算をし、賃貸料相当額の計算をし、受取家賃との差額で経済的利益発生(=給与課税)の有無を認識します。

 社会保険では、現物で支給されるものが、食事や住宅である場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨換算します。

社会保険料算定のための現物給与計算

 住宅で支払われる現物支給等である場合、1人1か月当たりの住宅の利益の額は(畳一畳につき)いくらと、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」で都道府県ごとに決められています。

 ここで計算される住宅面積は、居住用の室で計算します。住宅面積が㎡で表示されている場合、1畳あたり1.65㎡に換算して計算します。もし、勤務地がA県、社宅がB県にある場合、現物給与価額は勤務地であるA県による価額で計算します。

(住宅貸与の通貨への換算額)=(住宅面積)÷ 1.65㎡ ×(都道府県ごとの価額)

となります。都道府県ごとの価額は、日本年金機構のホームページで確認できます。

 被保険者(社員)から住宅費用を徴収している場合は、換算額から徴収額を差し引いた額が報酬額となります。換算額と同額以上の住宅費用を徴収している場合は、住宅貸与による報酬の額はゼロとして取り扱われます。

所得税法と社会保険法でどちらが優先?

 それぞれの規定で経済的利益の課税や現物給与発生の有無が決まってくるので、借り上げ社宅の場合、両方の計算をして、入居者から徴収する金額を決める必要があります。

 地域によっては、社会保険の現物給与額の方が所得税計算よりも高く算定されることもあるようです。往々にして所得税の経済的利益の有無の確認のみで安心しがちです。社会保険料の計算にも影響を与えないかどうか、社会保険労務士さんにも相談して手続きを進めることがおすすめです。

税理士事務所で給与計算をしていると税法のみをチェックして終わります。こうした現物給与は、社会保険の届出書を作成する社労士さんにも忘れず伝えましょう。

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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)

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借り上げ社宅の税金-個人は節税で、会社は変わらない

借り上げ社宅制度で個人の税金負担は減る

 会社が住宅の賃貸物件を借り上げして従業員等に貸与する「借り上げ社宅」制度を導入すると、通常、その従業員等の税金(所得税・住民税)の負担が減ります。それまで給与としていた額の一部を「借り上げ社宅」費用に充て、その分給与額面を減らす仕組みとなるためです。対象者は給与を減らされても、それまで支払っていた家賃費用を支払わなくてよくなるので困りません。

例:家賃15万円の社宅で自己負担5万円

従前:給与45万円家賃15万円で残30万円

導入後:給与35万円家賃5万円で残30万円

※給与額面10万円に対する税金負担が減るので手取りは多くなります。

 一方、会社側の経費負担は変わりません。

従前:給与45万円の支払い

導入後:給与35万円+家賃15万円-本人負担家賃5万円で45万円の支払い

※厳密には、会社負担の社会保険料等が、給与額面10万円にかかる分、減ります。

借り上げ社宅制度導入時に気を付けること

 社宅制度には社宅規程の整備が必要です。特定の人だけが経済的利益を享受しないような規程ぶりとしなければなりません。

 また、借り上げ社宅は、礼金や更新料、退去時の原状回復費用なども借主である会社負担となります。入居者負担額を決める際は、この諸費用負担の考慮も欠かせません。

社宅の適正家賃の計算方法(従業員の場合)

 借り上げ社宅の場合、家賃全額が会社負担では、従業員等に対しての給与とみなされ、課税の対象となります。課税されないためには、一定額の家賃(「賃貸料相当額」)を従業員等から徴収する必要があります。賃貸料相当額は(1)から(3)の合計です。

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント

(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))

(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント

 従来、受取家賃は、支払家賃の50%ならよいとか、従業員は10~20%の家賃とし、最終手段は、税務調査で正しい家賃を算出してもらえばよいなどもいわれてきました。

 以前は固定資産税の課税標準額は大家さんに聞くしかありませんでしたが、いまは賃借人も請求できますので、適正家賃の計算ができます。適正家賃の計算をし、給与課税されない金額を決めましょう。

使用人から受け取る家賃が賃貸料相当額の50パーセント以上であれば、受取家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。こうした計算は税理士にご相談ください。

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