インボイスがもたらす転嫁妨害や黙認

免税事業者の消費税転嫁の権利

 消費税法を素直に読むと、事業を行う者には、取引で受取った消費税を納める義務が課せられており、ただし、年1000万円以下の課税売上しかない者については、その消費税の納税義務が免除される、と書かれていることを確認することが出来ます。すなわち、免税事業者といえども、消費税を請求して受取る権利があるのです。

 消費税の転嫁拒否を監視する転嫁Gメンの根拠法である消費税転嫁対策特別措置法のガイドラインにおいては、免税事業者であることを理由にした消費税転嫁を制限する買い叩きをしてはならない、とされていました。課税事業者のみならず、免税事業者にも、消費税を転嫁請求する権利があることが、ここでも確認できます。

インボイス制度では

 令和5年10月1日から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が新たに始まるわけですが、ここで、事業者の消費税転嫁請求権に変容が起きたわけではありません。変容は、事業者の取引相手に於いてであって、その取引で適格請求書を受領していない限り原理的には仕入税額控除が出来ないことになった、ということにすぎません。

 しかし、免税事業者は、インボイス番号を取得することが出来ません。インボイス番号を持たない事業者から受取る請求書等は、適格請求書ではないので、その受取人においては、原理的には仕入税額控除が出来ません。ただし、経過措置として、制度開始後3年間は80%控除可能、次の3年間は50%控除可能と、されています。

インボイス制度での弱者用新税率

 そうすると心配なのは、当初3年間においては、転嫁消費税は8%にしてくれ、次の3年間では、5%にしてくれ、その後は、消費税転嫁は控えて欲しい、という要請が跋扈しそうな気がします。こんな時こそ転嫁Gメンの活躍を期待したいところですが、都合よく消費税転嫁対策特措法は、今年3月31日をもって、失効となっています。

 消費税法の建付けからは、事業者が課税取引をしたら、その取引額の中の110分の10は消費税のはずなのですが、当局には、この大前提を維持しようとする姿勢はなさそうです。買いたたきに遭いたくなければ、免税事業者も選択課税事業者となりインボイス番号を取得せよ、との姿勢です。

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令和3年分申告書等作成コーナー新機能

気が早いかもしれませんが

 国税庁のホームページで毎年刷新される確定申告書等作成コーナー。近年は電子化や利便性向上を物凄い勢いで進めています。少し気が早いかもしれませんが、国税庁はすでに令和3年9月に、新機能を発表していますので、ご紹介いたします。

スマホ専用画面の対象範囲拡大

新たに特定口座年間取引報告書・上場株式等の譲渡損失額・外国税額控除が、スマホ専用画面の対応となりました。

 給与収入と、ある程度の投資をしていらっしゃる方でも、スマホ画面からの申告が行いやすくなりました。

マイナンバー読み取り方法の追加

 パソコンで申告書を作成される方も、スマホアプリでパソコン上に表示される2次元バーコードを読み取れば、ICカードリーダライタを使用せず、マイナンバーカード方式によるe-Tax送信ができるようになります。

 今までのようにカードリーダーを買ったり、スマホをPCに接続して使えるように設定したりという事前のセットアップが不要となります。ただし、お使いのスマホが、ICカード読み取りに対応していなければならないので、ご注意ください。

これが欲しかった! 源泉票撮影で自動入力

 スマホ申告ですと、今までは源泉徴収票の内容をポチポチと入力していたのですが、スマホのカメラで源泉徴収票を撮影すると、自動入力される機能が追加されます。便利な機能がついに来ました。この機能の対象が拡大してゆくと、ほとんどの部分で入力を手動で行う必要がなくなるのではないでしょうか。

マイナポータル連携の種類増加

 令和3年分申告から、ふるさと納税と地震保険がマイナポータル連携の対象となります。マイナポータル連携は、発行元が連携対応している必要がありますが、事前設定しておけば、各種証明書の情報を自動入力してくれるようになります。

 なお、医療費通知情報(保険診療分)は令和4年分申告以降に、1年間を通したものが取得可能になる予定とのことです。

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