換価分割の課税

実家の土地を相続したものの、相続人には持ち家がある場合、たとえ家族の思い出が詰まった懐かしい家であっても、取り壊して売却せざるを得なくなることがあります。このようなとき、土地の売却代金を相続人の間で分ける換価分割が行われます。

相続税と譲渡所得税

相続開始の後に売却するのであれば、相続税評価額(路線価や倍率評価)で相続税を計算し、譲渡所得税は、被相続人の取得価額と売却価額をもとに計算します。相続税と譲渡所得税が課税されますが、相続税は遺産の取得に対して課税されるのに対し、譲渡所得税は、被相続人の取得時から蓄積されたキャピタルゲインの実現に対する課税ですので、それぞれ異なり、二重課税とは考えられていません。

また、譲渡所得の計算では、先に課税された相続税のうち、土地の価額に対応する部分は、取得費に加算され、その分、譲渡所得税の負担は少なくなります。

なお、相続開始前に、土地の売買契約が締結されていたときは、売却価額で相続税が課されることがあるので注意しましょう。

分割協議が未了のときは

申告期限までに遺産分割協議が調ったときは、相続税も譲渡所得税も遺産分割の割合で按分しますが、分割協議が調わないときは、どちらも法定相続分で計算されます。

相続税の申告期限後に遺産分割協議が調った場合は、修正申告または更正の請求により相続人の間で相続税の負担を精算することができます。しかし、譲渡所得税については、申告期限後に分割協議が調ったとしても遺産分割の割合で修正申告や更正の請求をすることはできず、法定相続分での申告のままとなります。税務署からすれば一度、納税が行われているので申告期限後の分割の変更は、相続人の間で精算してくださいという考え方のようです。

隠れた債務が見つかったときは

相続は実家の土地・建物だけと思っていたら、実は、親が生前、親族から金銭の支援を受けていたことがわかることがあります。このようなときは、親族間の争いでもある場合を除き、売却代金の一部を債務の返済に充当することになります。親族から親が金銭支援を受けた当時の事情を聞いて納得できる場合、これまでの親族の支援に感謝して親の債務を引き継ぎ、債権債務関係を清算することで相続手続きは終わります。

たんすの引き出しには、親の歴史が詰まっている。

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公益通報者保護法の改正

公益通報者保護とは

 公益通報者保護とは、「公益のために通報を行った労働者を保護するためのツール」とされています(消費者庁HP)。

 従来、「リコール隠し」や「産地偽装」「事故の隠ぺい」などの会社の不祥事について、労働者から行政機関などへ通報(内部告発)が多くなされてきました。

 公益通報を行った労働者が保護されないと、公益通報をしたことによる不当解雇などの不利益を被る可能性がありますので、労働者が安心して公益通報をしやすくするための法律が「公益通報者保護法」です。

「公益通報者保護法」の改正

「公益通報者保護法」は2006年に施行され、施行後5年を目途に見直しするとされていましたが、今年6月から改正法が施行されることとなりました。

  以下の3点が改正の目的とされています。

 ①事業者自らが不正を是正しやすく、安心して通報が行われやすくする。

 ②行政機関等への通報を行いやすくする。

 ③通報者がより保護されやすくする。

 ①については、窓口の設定、調査是正措置などの体制整備の義務づけ(300人以下の中小事業者は努力義務)、助言指導・勧告・公表などの行政措置の導入、通報者特定情報の守秘の義務化などが行われます。

 ②については、行政機関や報道機関等への通報の条件が拡大されます。

 ③については、通報に伴う損害賠償責任の免除が追加され、保護対象の通報は刑事罰だけでなく、行政罰も加わりました。

役員も公益通報者保護の対象に

 公益通報者の範囲が拡大され、労働者だけでなく、退職後1年以内の退職者、役員(自ら調査是正措置に努めたことが前提)も新たに対象となりました。

役員に公益通報を行ったことによる解任などの不利益が生じた場合、当該役員は会社に対して損害賠償請求が可能となります。

会社としては、労働者以外に公益通報者保護の対象が拡大することを前提に準備と対応が求められます。

役員も公益通報者保護の対象になります。

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