正社員中心主義から新規雇用増加策へ

正社員中心主義だった

コロナ禍の中での今年の税制改正により、従来の、大企業を対象とする昇給・設備投資促進税制、中小企業を対象とする所得拡大促進税制は、入退職者は少ない方がよいとする雇用維持とベースアップを奨励する正社員中心主義的な制度から新規雇用促進を奨励する税制に、様変わりしました。

中小企業を対象とする所得拡大促進税制は

中小企業向けの所得拡大促進税制では、既存の継続雇用者の給与の上昇という適用要件を放棄し、新規・既存を問わず、雇用者全体の給与等支給額を増やせとの制度になり、その増加率が1.5%以上の場合には雇用者給与等支給増加額の15%(2.5%以上増加で教育訓練費の対前年比も10%以上増加なら25%)の税額控除が出来るとの制度になりました。既存従業員の雇用維持よりも、雇用全体を増やして、失業救済への社会貢献してくれることを奨励しているわけです。雇用保険への加入も条件にしていません。

新規雇用促進税制へ

 中小企業限定ではない、大企業・中堅企業向けの昇給・設備投資促進税制では、設備投資要件が廃止された上、新規雇用をどの程度増やしているかが適用要件になりました。

国内事業所で新たに雇用した雇用保険被保険者に該当する者に1年以内に支給する給与の額の対前年比の増加率2%以上の場合には、新規雇用者給与等支給額の15%(教育訓練費の対前年比が20%以上増なら20%)の税額控除が出来るとの制度になりました。

 ただし、解雇の多い事業者を排除するために、前期比雇用者給与増加額が新規雇用者給与総額より少ないような場合には、前期比雇用者給与増加額が控除率を乗ずる対象額の限度となります。

雇用調整助成金の扱い

雇用を増やしてください。失業者が増えないようにご協力を‼

 雇用調整助成金等及びこれに類するものの額については、適用判定の場面での増加割合の計算における雇用者給与等支給増加額や新規雇用者給与等支給額の算定ではこれを考慮する必要はありませんが、税額控除額を計算する際の控除率を乗ずる場面では、これをそれぞれから控除する必要があります。

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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)

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認定経営革新等支援機関への税理士の登場と期待

認定経営革新等支援機関とは

 中小企業を巡る経営課題が多様化・複雑化する中、中小企業支援を行う支援事業の担い手の多様化・活性化を図るため、2012年8月30日に現在の「中小企業等経営強化法」が施行され、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を経営革新等支援機関として認定することにより、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。これは、経済産業省のホームページに掲載されている、冒頭の文章です。

事業再構築補助金の申請では

事業再構築補助金の場合では、認定経営革新等支援機関と相談して事業計画を策定し、事業実施段階でのアドバイスやフォローアップを行うこととされています。

最近までの登録状況

2012年11月5日に2,102件の第1号機関認定があり、2021年4月30日に1,132件の第67号機関認定があり、合計35,221機関が認定されています。登録申請は、初めほどの勢いではないものの、いま再び増えています。

 認定機関のうち、個人税理士は20,670機関認定、税理士法人は4,860機関認定、公認会計士は2,501機関認定、監査法人87期間認定と、税務に関連する事業者の割合が高く、80%を占めています。79,280人の税理士登録者数のうちの26%、税理士法人事務所数6,709のうちの72%が認定を受けています。

認定機関の介入を要件とするもの

 コロナ関連の助成金申請では、この認定機関の関与の要件が緩和されていましたが、今後の経済産業省関連の産業政策・税制の適用要件では、認定機関の関与を必要不可欠とする傾向が強くなりそうです。

今年の税制改正で4月1日施行にならずに、産業競争力強化法等の改正法の施行日待ちになったものが、租税特別措置法の単体法人向けの改正条文に絞った中だけでも条文数で32もありました。中小企業経営強化税制、所得拡大促進税制、70%損金算入のM&A促進税制などなど、産業競争力強化法等での事業者の認定や計画の認定が改正税法の適用の要件になっているためです。

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