給与格差と円安が海外会社就職を後押し?

リモートワークでの勤務が普及し、業種によってはフルリモートで居住地が会社の近くでないところでも問題ないという会社も増えています。極端な話、海外の会社と雇用関係を結び日本に在住のまま働くこともできます。円安が続いている2023年では、特に英語ができるITエンジニアであれば、人件費がより高い海外の会社にリモートワークで勤務し、年収アップを狙うことも可能となっています。

所得税の課税関係はどうなるのか

 話を単純化するため、前提として、リモートで海外勤務するITエンジニアは、全世界所得が課税対象となる所得税法上の日本の居住者とします。また、勤務する海外会社は日本に支店や駐在員事務所など拠点となる場所や給与支払事務所を持たないものとします。さらに、給与を支払う海外会社は日本との租税条約がある国にあり、給与所得者の居住地でのみ課税されるものとします。

 給与は国外から日本の銀行口座に送金されますが、その際日本の所得税の源泉徴収は行われません。そのため年末調整での課税関係の清算の対象とはならず、自分で確定申告をしなければなりません。円口座に振り込まれる場合は給料日に振り込まれた金額の合計が給与収入となります。日本もしくは海外会社所在国にある銀行の外貨預金口座に外貨で振り込まれる場合は、入金日のTTM(電信仲値相場)で円換算します。

所得税の計算で、所得控除や税率・税額控除他は税法の規定通りに適用されます。

社会保険等の加入の可否はどうなるのか

 日本在住で海外企業にリモート勤務の場合には、国内に社会保険の加入となる適用事業所がありませんので、社会保険の加入はできません。健康保険は国民健康保険、年金は国民年金に加入することになります。

 労働保険も、事業場がありませんので、適用されません。そのため、海外企業にリモート勤務の場合には、労災保険も雇用保険も加入できません。労災保険に代わるものとして、損害保険で付保しておくことの検討をお勧めします。雇用保険が付保されないことを補うには、雇用契約書で何らかの手当て(=例えば解雇予告期間を長く設定する等)を設けてもらうなどの事前の交渉が望まれます。

課税も社会保険等の加入の可否も、前提条件が変わると取り扱いも違ってきます。実際の案件では、税理士や社会保険労務士に相談して進めてください。

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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)

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