民法の配偶者居住権制度の今年4月1日からの施行開始に向けて、税制改正としては、すでに昨年早々に相続税法での評価規定新設と措令での小規模宅地特例の適用可化があり、今年は収用の場合の5000万円控除等の配慮規定への適用可化が用意されました。
しかし、配偶者居住権等に係る所得が譲渡所得課税の対象なら、配偶者居住権等は当然にも居住用の財産なのだから、居住用の3000万円控除、居住用の軽減税率、居住用の買換え特例などの適用についての手当を、収用の場合の配慮と同じく、することも必要だったはずです。
老後資金への課税配慮も社会的要請では
一人暮らしが困難とか、親族の介護疲れが限界に来ているとか、で自宅を清算して老人ホームに入る入居資金を得るという選択が多くのケースで避けて通れない、ということは予想されることです。
譲渡所得課税への配慮がないと、老後の転居が困難になる場合がありそうです。
そういう配慮がないと、わざわざ配偶者居住権を民法で用意し、相続課税時点で土地の上に存する権利との認識を前提に小規模宅地の適用を当然視したこと、すなわち、相続配偶者への生活保全措置との整合性が取れません。
総合譲渡課税ではペナルティ税制では?
配偶者居住権等に係る譲渡所得は総合課税の対象だとするのが、課税当局の見解です。そうだとすると、居住用財産譲渡に係る特例の適用対象は分離課税の長期・短期の譲渡所得に対象が限定ですから、適用への途は塞がれたことになります。
それだけでなく、配偶者居住権等が特別な配慮のない総合課税譲渡資産だとすると、モロに総合課税累進税率の対象になってしまうことにもなりかねません。ひいては、配偶者居住権を遺贈等することへの抑止政策税制になってしまいます。
総合譲渡課税でも配慮の仕組みを設けよ
居住用特例適用への途を開く法改正が今年の4月1日以後に向けて何故に用意されていなかったのか、不思議です。
民法の制度は始まったばかりなので、税制の制度不都合への遭遇者が現れないうちに、今までの経過におけるそれぞれの立法趣旨と同じ立法趣旨で不整合部分の除去をして欲しいところです。
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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)
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