JTBの減資-合法的租税回避

資本金1億円は中小企業扱いで税負担軽減

 新型コロナ感染の影響で、旅行業界・飲食業界を筆頭に、かつてないほど業績が悪化しています。こうした中で、財務基盤の健全化を図るとともに、税負担の軽減を受けるねらいもある「資本金を1億円以下にする減資」が増えています。JTBは23億4百万円から、スカイマークは90億円から、カッパ・クリエイトも98億円から、それぞれ1億円に減資しています。

「中小企業扱い」による税負担軽減の狙いは、主に、(1)法人税の欠損金の繰越控除の活用、(2)地方税である法人事業税の外形標準課税の対象から外れること、などがあります。(1)は、大企業であれば黒字=所得と欠損金の相殺は所得の50%までに制限されていますが、中小企業は全額控除できます。(2)は、中小企業になることで、大企業であれば赤字でも課税される外形標準課税(事業所の床面積や従業員数、資本金等及び付加価値など外観から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額が算定される課税方式)が対象外となります。

(注)上記2つの規定は「資本金の額」が基準となります。一方、均等割(=前年の所得金額の多少にかかわらず、地方自治体の行政サービスを維持するために要する費用を広い範囲の人に負担してもらうための税)は、「資本金等の額=資本金+資本剰余金」が課税標準となるため、資本金を資本剰余金に振り替えて減資をする場合(=カッパ・クリエイトのケース)では、均等割は従前と変わりません。

租税回避ですが合法です

租税回避は、税金を逃れるという悪いイメージがありますが、合法であれば何ら問題はありません。意図はどこにあれ、通常の手続で減資をして、「資本金1億円超」という課税要件の充足を避けることができています。

租税回避への対抗は税制改正だけ

 誰が見ても“最初から贈与税回避の意図がアリアリだろう”と思われた「武富士専務贈与税事件」は、最高裁で合法の判決となりました。結局、国は税制改正をし、こうした抜け道に蓋をすることで対処するしかできませんでした。

従業員がグループ全体で2万7千人(JTB 2020年3月末)もいてどこが中小企業だという世論が大きくなると、税制改正で、こうした減資による減税にも蓋がされるかもしれません。

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70歳までの就業確保が努力義務化 されます(令和3年4月~)

70歳までの就業確保が努力義務に

改正高年齢者雇用安定法の施行により、令和3年4月以降、70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務となります。

 平成16年の高年齢者雇用安定法改正で、65歳までの雇用確保措置が義務づけられ、事業主は①定年の65歳以上への引き上げ、②定年の廃止、③65歳までの雇用継続制度の導入のいずれかを、既に講じていることと思います。

対象事業主と努力義務となる措置は?

 定年を廃止した事業主は対象外ですが、今回対象となる事業主は以下の通りです。

・定年が65歳以上70歳未満の事業主

・継続雇用を65歳までとしている事業主

 事業主に努力義務として求められる措置は、以下のいずれかとなります。

70歳以上への定年引き上げ
定年の廃止
70歳までの継続雇用制度の導入
70歳まで業務委託する制度の導入
事業主か事業主が委託・出資等をする団体が行う社会貢献事業に70歳まで従事できる制度の導入

 ①~③は、従来の65歳までの雇用確保義務を70歳に引き上げて努力義務としたものです。④と⑤は、過半数労働組合等の同意を得る必要がありますが、今回追加された「創業支援等措置」として雇用契約に限らず、業務委託契約や社会貢献活動への従事を対象に含めていることが特徴です。

70歳までの就業確保措置の留意点

 努力義務であるため、過半数労働組合等との同意を得ることで、対象者に基準を設けて限定することも可能とされています。

 なお、70歳までの継続雇用制度は、65歳までの継続雇用制度より柔軟で、事業主及び特殊関係事業主(グループ会社)以外の他社での継続雇用も認められます。ただし、他社による継続雇用では、雇用契約期間が5年を超えると、無期転換申込権が発生するので注意が必要です。

まだまだ 働けますよ!

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