法人の設立手続完了前に発生の損益の帰属
新たに会社を設立するには、登記書類の準備から定款認証・法務局への登記など、概ね1か月程度の期間が必要です。開業準備のタイミング次第では、法人の設立日(法務局への登記申請日)より前に経費や売上などの損益が発生することもあります。こうした設立期間中の損益の帰属はどこになるのでしょうか?
法人の設立期間中にその設立中の法人について生じた損益は、その法人のその設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することができるものとするとされています。ただし、①設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合や②その法人が個人事業を引き継いで設立されたものである場合(いわゆる法人成りの場合)はこれに該当しない、とされています。
設立前の領収書等の宛先
こうした期間に発生した経費の領収書等の宛先はどうすればよいのでしょうか?
登記前なので実在しない会社名ですが、設立後最初の事業年度の損益とすることを考えると、設立予定の会社名を記載してもらうことが無難です。正しくは登記完了前の会社名の使用はできないのですが、私的な費用とその法人に帰属すべき費用を明確に区分するために設立予定の会社名を使う方がよいという考えによります。
売上の仮請求書は後日正式請求書に差替え
設立期間中に経費が発生することはよくありますが、たまに売上が発生してしまうこともあります。この場合は、設立期間中であれば、設立手続き完了前である旨をしるした仮の請求書や領収書を発行し、後日、設立完了後に、正式な請求書や領収書に差替える手続きとなります。
なお、令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されます。会社設立日が令和5年10月1日以降となる場合において、会社設立後に発行した正式な納品書や請求書であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けるときには、改めて適格請求書の発行が必要となります。今すぐの話ではありませんが、今後会社設立をされる場合には留意が必要です。
宛先は設立予定の会社名がベターですが、個人名でもらった場合でも、その使途が会社用である旨のメモ書きをお勧めします。 |
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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)
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