何が問題か
例えば、仕事用のスマートフォンをオンにしているとき、社内や社外から連絡があれば、それが就業時間外であっても応じる人は少なくないでしょう。諸外国においては、「つながらない権利」に関する法的規制を設けているところもありますが、今のところ我が国ではそのような規制はありません。この問題を放置することによるリスクには、①その対応時間が労働時間に該当し、従業員から残業代の請求を受ける可能性があること②オンとオフの境界が曖昧のまま、結果として長時間労働となり、従業員の心身に悪影響を与え、業務災害につながる可能性があることが挙げられます。
より対策が必要なのは
社内連絡への対策であれば、社内での取り扱いを検討し対策を講じることは、それほど難しくはないかもしれません。一方顧客への対応については、顧客満足度等の問題もあり対策が難しい面があります。とはいえ、何も対策を講じず放置することは上記のような問題が生じる可能性があります。
考えられる対策
最初に検討すべきは、就業時間外の顧客対応を必要とするか否かです。業種やサービス内容によっては、顧客満足等の観点から、就業時間外の顧客対応が必要なこともあるでしょう。この場合の対応を、各従業員の判断に任せるのではなく、就業時間外の顧客対応を義務であることを明確にして、そのうえで、事業主としての対応(残業代の支払や従業員の健康に関する安全配慮義務)を行う体制づくりが必要になります。
他方、就業時間外の顧客対応は不要とする場合には、社内外にその旨を周知することが必要になります。特に、顧客に対して周知する際、顧客への対応を担当者である従業員に任せてしまうと、それまでの両者の関係によっては、なし崩し的になり、結果として、就業時間外の対応が継続してしまうことも考えられます。ここは上司や経営者が、会社を代表して顧客と向き合うことが必要になるでしょう。
「柔軟な働き方」と「仕事のオン・オフの曖昧さ」は表裏一体の関係ですし、国も「つながらない権利」の検討を進めています。それぞれの会社でこの問題をどのように捉え、どのように対応していくか、今後の重要課題になることが考えられます。
担当者レベルでは解決できない問題です |
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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)
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