家賃非課税となったときの行政指導

 平成3年9月までは、居住用家賃についても消費税課税対象でした。課税対象から非課税対象への切り替えがスムーズに行い得るようにする、建設省住宅局長の発遣文書があります。

その文書は、課税が非課税に変わるに際し、当時の税率3%全額を減額するのではなく、賃貸住宅経営のための必要な諸経費や資材購入に係る消費税を、先の3%から控除した残額を減額する、としています。

 前段階消費税分の転嫁は必要事としての行政指導なのです。ただし、これを実行した大家さんは、ほとんどいなそうです。

インボイス開始後6年間の激変緩和措置

 令和5年10月1日から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が新たに始まるわけですが、インボイス番号を持たない免税事業者から受け取る請求書等は、適格請求書等ではないけれど、令和5年10月1日から最初の3年間は取引額総額の110分の10の80%を仕入税額控除可能とし、次の3年間は当該110分の10の50%を仕入税額控除可能、としています。

でもこの措置は、免税事業者の前段階消費税転嫁のための配慮ではなく、仕入側への配慮措置なので、この6年経過後は、何の配慮措置も残りません。

免税事業者の消費税の転嫁の可能性

相手が個人消費者なら、免税事業者が消費税の転嫁をしても何の異議も聞こえて来ないでしょう。また、希少価値のある事業者なら、免税事業者か課税事業者かを問われることなく取引されるかもしれません。

でも、BtoBでの取引弱者に該当する多くの免税事業者にとっては、非課税事業の大家さんと同じく、転嫁出来ない前段階消費税の自己負担化(損税)になりそうです。

免税事業者の価格転嫁と簡易課税

免税事業者でも、インボイス番号取得により課税事業者に変身すれば、前段階消費税の自己負担は消えます。ただし、申告と納税の煩瑣が生じます。

申告納税の煩瑣を多少なりともカバーしてくれるのは、簡易課税かもしれません。

インボイス制度導入はBtoBでの免税事業者制度の廃止の効果をもたらすだろうな。

 免税事業者には、非課税事業の大家さんよりも、前段階消費税の自己負担化を回避する途が少しだけ広く開かれている、と言えそうです。

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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)

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