トランスジェンダー職員にトイレ使用制限
最高裁(第三小法廷)は、令和5(2023)年7月11日、経済産業省に勤務するトランスジェンダー職員に対し、人事院の判定のもと行われた「執務階とその上下階の女子トイレの使用制限」を違法と判断しました。
この職員は、戸籍は出生時の男性のまま、カミングアウト後は女性の服装で勤務し、女子トイレを使用していました。健康上の理由で、性別適合手術は受けていません。
経済産業省は、この職員に約5年間も、執務階から2フロア以上離れた階の女子トイレを使用するように求めていました。
最高裁は何を重視して判断したか?
最高裁が、本件の女子トイレの使用制限を違法と判断した要素がいくつかあります。
①制限されていない階の女子トイレの利用で、何の問題も生じてないこと。
②女子職員への説明会で、一部の女子職員が違和感を抱いているように「見えた」としているが、明確な異議は出ておらず、トランスジェンダーに対する理解も不十分で、研修で相当程度払拭できたはずなのに、取り組んでいないこと。
③職員に性別適用手術を受けるよう、反復して催促していたことが挙げられます。
一方、カミングアウト直後に「執務階とその上下階の女子トイレの使用を制限」したことは、他の女子職員への激変緩和措置として、やむを得なかったとしています。
最高裁は、約5年間も制限の見直しや研修が行われず、放置されていたことを重視して判断したものと思われます。
なお、一審は職員の勝訴、二審は国が勝訴していましたので、裁判所の判断が二度も変わったことになります。
判決が社会に与える影響
令和5(2023)年6月に、「LGBT法案」が国会で可決成立し、公布されました。
民間企業も、性的マイノリティと言われる社員のトイレ等の施設利用については、試行錯誤されているのではないでしょうか。
この判決は、今後の民間企業の取り組みにも大きな影響を与える可能性があると思われます。
LGBT対応もハラスメントと同じく、放置してはいけません! |
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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)
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